こんにちは、まめたです。
理学療法士は国で決められた診療報酬に沿って仕事をしている。しかし、決められた診療報酬で仕事をしているため、実際のところ治ろうが治るまいが患者さんからいただく金額は変わらない。今回はそんな理学療法士のジレンマについて考えたい。
『疾患別リハビリテーション』の料金体系
先にも書いたが、理学療法士は診療報酬という枠組みで仕事をすることが多い。もちろん介護保険領域や行政との関わり、はたまた自費診療など多方面に渡って活躍する理学療法士も多くなっている。しかし、疾患別リハビリテーションという『20分・1単位』での算定方法の中で働く理学療法士が圧倒的に多い。
この制度の良いところは、国が理学療法の金額を決めているため、患者側からすると、国の定める負担割合で良いため、比較的安価にリハビリテーションが受けられ、ぼったくりのような金額を請求されないことにある。
しかし、理学療法士側からすれば、治療効果が出ようが出まいがいただく金額に変わりないのである。
『疾患別リハビリテーション』のジレンマ
では、『理学療法士が疾患別リハビリテーションを実施した際の算定金額に差がない』からといって、適当に仕事をしているか?
私はそんなことはないと思っている。患者を少しでも良くしようと日々臨床に取り組むスタッフの姿をみている。ただし、管理職をしている分、患者からスタッフに対しての担当に対するご意見を聞くことが多い。その中でも、「担当を変えないでほしい」や「担当以外の人がリハビリをするなら行きません」といった意見を聞くことがある。これは担当からすると非常に嬉しい言葉にも聞こえるが、私としてはそうでもないと思っている。
ちなみに前提として、私の職場の外来リハビリは担当制を用いており、担当が患者とリハビリ日時を調整する予約制をとっている。リハビリ担当の指名制などは実施していないが、患者の性別等を配慮して担当を割り振りしている程度であることを知っておいてもらいたい。
では、なぜ私が患者からの担当変更拒否に後ろ向きか?
指名に対する報酬がない
疾患別リハビリテーションは、理学療法士という国家資格を保有していれば算定可能であり、診療報酬に定められている。しかし、そこに指名制についての記載はない。つまり、リハビリ側の配慮として患者の要望を聞いているに過ぎないのである。指名するのであれば指名料を別途お支払いいただきたい気持ちであるが難しいのが現実である。
治療効果に対する報酬がない
ご存じの通り、疾患別リハビリテーションは実施した20分に対して報酬が出る時間報酬である。そのため、介入した20分で痛みに変化があろうがなかろうが報酬は変わらない。極端な話をすると、1回で患者を治してしまう理学療法士と、10回で患者を治す理学療法士、どちらが患者ひとりあたりから報酬を得ているかというともちろん後者である。日本の人口が減りつつある中、患者に多くの時間を割く方がもしかしたら良いこともあるかもしれない(あくまでお金だけでの話である)。
もちろん、早く治療ができることで、副次効果として患者が集まりやすいということは考えられる。また、治療効果が高いということは、職場からの評価が高いことにつながり、給与に反映されるかもしれないが、それはあくまで職場次第であり、疾患別リハビリテーションの報酬とは別の話である。ちなみ回復期病棟では、FIMなどのアウトカムを出すようになっており、成果報酬への第一歩とも捉えられる。
ジレンマ
疾患別リハビリテーションの中で働く理学療法士が、日々勉強し、患者の治療にあたることは本当にすごいことだと感じる。そこに報酬がない中で、理学療法に対する興味なのか、患者への思いなのか、職業人としてのプライドなのか、人それぞれだとは思うが、それが今の理学療法士業界を支えているといっても過言ではない。
しかし、その一方で評価されにくい一面があるため、一生懸命に取り組んでいる理学療法士は「これだけやっているのに…」と、時に無力にならないだろうか?心配になる。そして、良い人材はより良い環境へ移っていくのである。
メリット
もちろんメリットもある。理学療法士免許さえ持っていれば、20分の介入でしっかり報酬がもらえるからである。効果が出にくい理学療法士からするとありがたい報酬体系である。しかし、それが理学療法士の質を下げる(上がらない)一因になっているかもしれない。
まとめ
断っておきたいのが、患者さんからの担当についての要望があった時、できるだけ要望に沿えるよう配慮はしている点である。医療職とはいえ、病院等はサービス業だとも思っており、患者満足度を上げることはとても大切なことだとも思っている。
今回は、疾患別リハビリテーションについて書いたが、メリット・デメリットはある。例えば、成果報酬にした場合、今まで内発的動機付けで働いていた理学療法士が、目的が報酬を得ることに変わってしまい、外発的動機付けで行動するようになってしまう可能性があるからである。
また、制度設計を変えるには政治の力も必要である。人によっては、『選挙運動』と聞くだけで拒否反応が出てしまうかもしれないが、大切なことの1つでもあると個人的には考える。
今回の内容に結論はない。なにかのきっかけになれば幸いである。
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