なめろうです。
理学療法士の代表的な評価方法の1つである“関節可動域(以下ROMとする)テスト”
学生時代から馴染みがあり、症例検討会などで必ずと言ってもいいほど登場し、臨床でも頻繁に活用しているかと思います。
そんなROMを解釈する上で、あまりり聞いたことはないけど、私が経験する中で“割とあり”なんじゃないかと思う視点について書きます。
ROMの解釈
私がこれまで見聞きした範囲ですが、ROMの解釈には以下があります。
- 最終どこまで動くかという視点
- 制限している要因は何なのか(骨?筋?その他の軟部組織?)という視点
- 動作との関連性の視点
「そんなことはない」と叩かれるかもしれませんが、この①~③以外の視点で、私の臨床経験の中で生まれた視点があります。
それは“実用的ROM”(造語です)という視点です。
実用的ROMとは、動作する中で実用的に動かせるROMのことを指しております。
概念的なイメージ図で説明していきます。
この図は、縦軸が関節を動かして際に生じる抵抗感で、横軸はROMになります。
抵抗感の値が高くなるほど動かしにくくなり、抵抗感100になったら、それ以上動かない、つまり最終ROMになります。
抵抗感の60%あたりに赤線がありますが、これが実用的に関節を動かせるかどうかの抵抗感値の概念的な閾値で、その閾値に該当するROMまでが実用的ROMになります。
図のA、Bともに最終ROM,実用的に関節を動かせる抵抗感値の閾値は同じとした場合、AとBの違いは実用的ROMであり、Bのほうが、実用的ROMが大きい。つまり、最終ROMはAと変わらないが、Bのほうが動作上で実用的に動かせるROMは大きいということを意味しております。
この実用的ROMは、ROM(active)とは異なり、自身の筋力によりどこまで動かせるかがROM(active)のに対して、実用的ROMは、自身の筋力以外の力によるROMも含みます。
実用的ROMの視点があると、どう違うのか
簡単な例をあげて説明します。
- 起立能力が低下しており、重心の前方移動が乏しいことが要因かも?
- 足関節背屈ROMは5°であることから、起立で重心前方移動を阻害している因子のひとつに足関節背屈ROM制限があるかもしれない
- 足関節背屈ROM拡大のためのROMエクササイズを実施
- アプローチ後、起立動作を再評価したら、重心前方移動が少し改善され、前より起立がスムーズになった
- 足関節背屈ROMを再測定したら、5°と角度は変わらなかった。
このケースに対して、「動作は改善したけど、足関節ROMは変わらなかったので、動作が改善されたのはROM以外の要因だろう」と考察することができます。
ですが、実用的ROMという視点のもと、他動運動時の抵抗感の評価→ROMエクササイズ→再測定したら抵抗感が減ったとなれば
「足関節の最終ROMは変わらなかったけど、動作改善したのは、実用的ROMが拡大したことが考えられる」
という考察になり、最終ROMよりも手前の角度でのROMエクササイズを続けて実施し、より動作の改善を図ろうといったアプローチ方針にすることもできます。
まとめ
今回書いた“実用的ROM”の視点は、急性期や回復期より機能面の改善が鈍化する傾向にある在宅分野で働く中で、「何か機能的な変化は出せないのか」という思考と、私自身が日焼けした際に肩関節の最終ROMは180度近くあるのに、途中動かしにくく日常生活で肩関節を動かすことを制限していた経験から生まれました。
この視点ができるようになってからは、抵抗感が増えだすROMの範囲を反復するアプローチをすることが増えま、それによって少しは動作の実用性が向上できることを実感しています。
抵抗感というセラピスト主観の評価であるため、妥当性はどうなんだという側面はありますが、改善が鈍化する慢性期でも機能面に着目する視点の1つとして参考にしてもらえたらと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
コメント