それぞれの記事一覧ページへ

SpO2の測定原理を知っているだろうか?

全理学療法士向け
スポンサーリンク

前回は、SpO2の概要的なことについて述べた。
呼吸をかじったことのある方であれば、退屈な内容だったかもしれない。

前回の内容において、SO2は酸素飽和度という全ヘモグロビン中の酸化ヘモグロビンの割合を意味すると述べた。また、SaO2は動脈血酸素飽和度のことであり、通常は動脈血を採取して機械で測定する。

対してSpO2は、このSaO2を経皮的に測定したものである述べた。

特に意識しないと、「へーそうなんだ」ぐらいの感想であると思うが、よく考えてみてほしい。

本来であれば動脈血を採取して測定しないといけないものを、なぜ経皮的に測定できるのだろうか?

もし血液採取をせずとも血液の成分を調べられるのであれば、患者も痛い思いをする必要がなくなる。
しかしながら、臨床場面において血液の成分を経皮的に測定できるものは、動脈血酸素飽和度のみだ。

ではなぜ動脈血酸素飽和度だけが特別なのかをあなたは説明できるだろうか。

 

そこで今回は、SpO2を測定するために用いる“パルスオキシメーター“がどういった原理において、経皮的にSaO2を測定するのかを知り、臨床判断に応用できるようにしてみたい。

 

というわけで、本題に入る前に下記の簡単な質問に答えてみてほしい。

SpO2を臨床現場で測定すると、必ずSpO2と脈拍がセットで表示されている。なぜこの二つがセットで測定されているのか説明せよ。

さて、早速本題に移っていこう。

 

 

 

スポンサーリンク

ヘモグロビンの特性

てめぇらの血は何色だーーっ!!  北斗の拳 第8巻より

若い子らは急に何をいってるのだろうと思っただろうか。対して、私と同世代の人はビビッと来たかもしれない。

かの人気漫画「北斗の拳」に登場する 南斗水鳥拳の使い手 レイの名台詞だ。

容姿端麗で振る舞いもかっこいい、北斗の拳でも1.2を争う人気キャラクターである。

こんな話をしてると久々に読みたくなってきた。

少々脱線してしまったが本題に移ろう。

 

皆さんは、このレイの素朴 (?) な問いに対してどう答えるだろうか。

おそらく大半の人は 赤色 と答えるだろう。小学生でも答えられるイージー問題だ。

ただ、採血検査を受けたり、献血に行ったことがある人は思い出してほしい。果たして、あの注射器に吸い込まれる自分の血が赤色に分類されると思えるだろうか。

 

常識的なことではあるが、血液の色を規定しているのは赤血球に含まれるヘモグロビンであり、このヘモグロビンは、酸素を取り込むことにより赤色に変化する。逆に酸素を離すことで暗赤色に変化する
ゆえに動脈血は 赤色、静脈血は 暗赤色 となる。

つまり、血液は酸化ヘモグロビンと還元型ヘモグロンの割合によって色が変化することになるのだが、この酸化ヘモグロビンと還元型ヘモグロビンの割合ってどこかで聞いたことがないだろうか。

そう、前回にも出てきた酸素飽和度。つまり SO2 だ。

言い換えれば、SO2の数値と血液の色は関係しており、血液の色からSO2の数値を判断できるということになる。

だんだんパルスオキシメーターの原理に近づいてきた。

ここからが重要となるのだが、SO2と血液の色を紐づけるためには、血液の色を定量化する必要がある。SO2は数値で表すことができるが、色はどうするのだろうか。

この問題を解決するためのキーワードとして、“ 吸光度 “というものがある。

っと吸光度を考える前に、光と色についてよく知らない方も多いと思われるので、光と色の関係についても簡単に述べていこう。

 

 

スポンサーリンク

光と色の関係

そもそも色はなぜ見えるのか?少し哲学的な話にも聞こえるが、ある物体が反射した光の色調によって我々は色を認識することができる。

通常、物体は光を吸収する性質があり、吸収する光については物体によって差がある。

例えば、赤色のリンゴは、赤色以外の光を吸収する性質が高く、逆に赤色の光を反射する。その結果、目には赤色の光のみ入ってくるため、リンゴは赤く見える。
黒色のカラスは、全ての光を吸収することによって、反射する光がなくなる。その結果、目に光が入って来ないため、カラスは黒く見える。(下図参照)
これからの季節、黒い服は暑くてたまらない理由がよくわかるだろう。

 

 

では吸光度とは何かだが、wikipediaによると、

吸光度(きゅうこうど、英: absorbance)とは分光法において、ある物体を光が通った際に強度がどの程度弱まるかを示す無次元量である。

wikipedia より引用

 

・・・・・・なんのこっちゃ。

 

要は、ある物体の光の通し方を算出したものといえる。

酸化ヘモグロビンは赤色に見えることから、赤色の光を通しやすい。つまり赤色の吸光度が低い。
逆に還元型ヘモグロビンは酸化ヘモグロビンと比較すると赤色の光を通しにくい。つまり赤色の吸光度が高い。となる。

実際にパルスオキシメーターを見てもらうと、測定部位から赤色の光が出ていることがわかるだろう。実は、あの赤色は、単なる赤色の光ではなく、赤色光 赤外光 という2種類の光で構成されている。

この赤色光赤外光のそれぞれの吸光度と実際に動脈血で測定したSO2の数値を実験的にマッチングさせる事により、血液の色からSO2を測定することが可能となる。

つまり、動脈血を採取する必要がなく、光を当てるだけでSO2を測定することができるのだ。

より詳しく知りたい方は、吸光度曲線 というものを調べてみてほしい。

ちなみにこれらの原理を基にして経皮的にSO2を測定する装置であるパルスオキシメーターを開発したのは、青柳卓雄という日本人なのである。本当に誇らしい気分になる。

 

さて、SO2を経皮的に測定する原理については、何となくお判りいただけただろうか。

次は、本題のパルスオキシメーターの測定原理について踏み込んでいこう。

これを知ることで、臨床でのSpO2の見方も変わってくるはずだ。

 

 

スポンサーリンク

パルスオキシメーターの測定原理

前項では、赤血球に赤色光と赤外光という2種類の光を当てることで、SO2を測定できるという話をした。

最もスタンダードな測定方法である、指にはめるパルスオキシメーターで説明すると、指に装着したプローブから、指に対して赤色光と赤外光を照射する。そうすると照射した光が指を通って、反対側にある受光部に届く。

前述のとおり、酸化ヘモグロビンと還元型ヘモグロビンは、それぞれに赤色光と赤外光の異なる吸光度を有している。つまり、照射した光と受光部で感知した光の成分の差を測定することで、組織に吸収された光の成分がわかる。この結果をそれぞれの吸光度を基にして分析すると、組織における赤血球の酸素濃度を測定できるというわけだ。いや~本当に素晴らしい機器だ。

 

・・・で皆さんは納得できるだろうか。いや、納得できないだろう。

 

実際に測定されているSpO2はあくまで動脈血の酸素飽和度である。上記の説明のみでは、動脈血の酸素飽和度のみを測定することが困難だ。なぜなら、実際に光を通過させているのは指全体であり、そこには血液のみでなく皮膚や筋肉・骨などの様々な組織が入り混じっており、それぞれに吸光度が存在する

つまり、指に光を当てるだけではSpO2は測定できないはずなのだ。

SpO2を測定するためには、指の組織全体の中から、動脈の成分のみを取り出して解析する必要がある・・・

 

皆さん、よい解決策は思いついただろうか。実はこれを解決する手立てとして重要となるものが、脈拍 である。

通常、指の組織である皮膚や筋肉・骨などは動かしていない場合は静止している。ただ唯一そんな状況でも動いているものが動脈である。

 

つまり、動脈が拍動しているタイミングと拍動していないタイミングとの差を計算することで、拍動している部分だけの吸光度を測定することができる。この拍動している成分はすべてが動脈の成分であるため、この部分の吸光度からSO2を算出すると、SpO2が測定できるわけである。

 

だからこそ、SpO2を測定する機器に関しては、必ず脈拍も同時に表示されているだろう。なぜなら、脈を把握していないとSpO2が算出できないからだこれについては、上の図を見てもらえば容易に理解できるだろう。

言われてみたら簡単な原理かもしれないが、実際に発明するのとは訳が異なる。

これを発明した青柳氏は2020年に亡くなられたそうだが、日々臨床上でパルスオキシメーターにお世話になっている身であることから、最大限の敬意を示したい。

ちなみに青柳氏の功績については、日本光電のホームページを参照頂きたい。

 

 

まとめ

今回は、日常的に使用しているパルスオキシメーターの原理についての内容となった。SpO2は知っていたとしても、測定原理については知らなかった方が多いはずだ。

今回、なぜ測定原理について深堀ってみたかというと、この原理自体は素晴らしいものの、精緻な計算によって成り立っており、ましてや測定しているものがそこら中にありふれているであることから、測定環境や条件が整わないと誤差を引き起こしやすいというデメリットもある。

簡便かつパーセント表記であるため馴染みやすいからこそ、その数値にミスリードされやすい。

臨床でパルスオキシメーターを用いる際は、そういったデメリットの部分についても十分に理解をしておくことが望ましい。

 

そこで次回のブログでは、このパルスオキシメーターの結果の解釈に関する内容にしていこうと考えている。

SpO2の数値の解釈や陥りやすい落とし穴について説明しようと思っているため、皆さんの臨床での手助けになれば幸いだ。

それでは今回はこの辺で。

 

 

”パルスオキシメーターを利き手に付けた状態で杖歩行しようとしたときに、慌てて反対側の手に付け直すのよくあるよね”
(´-`).。oO

この記事を書いた人
りゅうぞう

生理学好きのギャンブラーPT
経済と投資について勉強中!!

全理学療法士向け
スポンサーリンク
スポンサーリンク
シェアする
スポンサーリンク
おっさん理学療法士はこう考える

コメント

タイトルとURLをコピーしました