それぞれの記事一覧ページへ

SpO2について十分に理解できているだろうか? SpO2を再考して臨床に活かす!

全理学療法士向け
スポンサーリンク

今週はりゅうぞうが担当する。

今まで挙げた3つの記事(理学療法士と急性期と私急性期病院で働く理学療法士の日常急性期病院で10年以上働いて感じたメリット3選)は、主に急性期病院という領域について、経験則を踏まえて話を進めてきた。ブログを開始して4回目となる今回は、少し趣向を変えて医学的な内容を記事にしてみる。

どのような内容にするか悩んだのだが、急性期病院に限らず様々な領域で広く用いられている、SpO2について深く掘り下げていくことにした。

「SpO2なんてよく知ってるよ!!」と思われている方も多いだろう。ただ、よくよく調べてみると、SpO2について意外と知られていないことも多いのでご覧いただけると幸いだ。

SpO2について知ってるつもりだけど自信がないという人に対しては、特にこれからの記事が役に立つだろう。

 

といったところで本文に進もうと思うが、その前に、以下の問題について考えてもらいたい。

採血検査より貧血を認めた患者の診療において、モニタリングしておくべき指標として、以下の中から最も妥当ではないものを選べ。

1.心拍数
2.呼吸数
3.SpO2
4.血圧
5.息切れ

皆さんは、この問題に自信を持って答えられるだろうか?

全然自信がない方もご安心頂きたい。このブログを読むことにより、呼吸器に関して、後輩へ先輩面して説明できるようになると思われる。

それでは、早速進めていこう。

 

 

 

スポンサーリンク

SpO2に関連する指標

新型コロナの流行に伴い、重症化の一つの指標として世の中に広く知られることとなったSpO2。我々医療業界では昔から使用しており、特にコメディカルスタッフがよく使用しているものでないかと思っている。

そんな比較的身近なSpO2ではあるが、皆さんはSpO2についてどのような認識を持っているだろうか?

・呼吸機能が悪い人に使う指標。
・指にサーチュレーションモニターを挟むだけで簡単に測定できる便利なもの
・単位が%であり、低下すると呼吸状態が悪くなっている
・特に90%を切ると危ないから、SpO2が下がったらすぐに休憩する。

とまあこんな感じの認識の方も少なくないだろう。

大筋間違ってはいないが、臨床にて使用頻度が高い指標であるため、もう少し周辺知識を加味して認識を深めると臨床での見方も変わるはずだ。

SpO2を理解する上においては、SO2について知っておく必要があるため、SO2とは何かというところから始めていこう。

 

SO2(酸素飽和度)について

SO2とは酸素飽和度のことであり、測定部位の血中に含まれる全ヘモグロビンの内、酸化ヘモグロビンの割合を指す動脈における酸素飽和度をSaO2と表記し、サーチュレーションモニターで測定したものをSpO2としている。

SaO2のaは動脈(artery)、SpO2のpは経皮的(percutaneous)を意味する。
SpO2とは、動脈血酸素飽和度(SaO2)を経皮的に測定した指標である

SpO2の説明としては以上で終了なのだが、この程度であれば認識が深まったとは言えないだろう。

次に、SO2に似た指標として、呼吸器疾患を担当しているとよく耳にするPO2についても説明していく。

 

PO2(酸素分圧)について

呼吸器疾患に関わる方の中には、SpO2と似たPO2という指標を目にすることが多いだろう。

これは、血液(血漿)に含まれる酸素の分圧を指し、一般的には動脈血の分圧であるPaO2が用いられる。

この分圧については解説すると長くなるため割愛するが、SpO2と同様に酸素化の指標であり、60mmHgを下回ると呼吸不全と定義される。

ちなみに、上記のSpO2とPaO2は関係しており、呼吸不全の基準である60mmHgがSpO2の90%に相当するとされる。よくSpO2の注意する数値として90%を用いていると思われるが、その理由の一つである。

SpO2と異なり、測定のためには動脈血を採取する必要があり、通常の採血検査よりもより侵襲的である。実際の臨床場面では特殊な状況を除いて、頻回に測定することはないだろう。

これらの観点からも、酸素化をモニタリングする方法として、SpO2が優れていると言える。

さて、SpO2を理解する上では、これらの指標のみでは不十分であり、臨床場面において応用させていくのは難しい。
そこで今回はより生理学的観点からSpO2について深堀していきたい。

 

 

 

スポンサーリンク

SpO2を理解するために生理学的な知識

SpO2とは何ですか?と聞かれた場合、皆さんはどのように返答するだろうか。

SpO2は呼吸状態を見る指標であると答える方が多いとは思われる。

しかし、呼吸状態というとかなり広い概念であることに注意が必要である。SpO2は呼吸状態の中でも酸素化の指標である点に注意が必要だ。

 

呼吸器の役割について

そもそも呼吸器の役割とは何かを考えると、空気中に含まれる酸素を血液の中に取り込むことと言える。

酸素を血液の中に取り込むためには、実際に空気中の酸素を血液とのやり取りをする肺胞まで運ぶ必要がある。

息を吸うことにより空気中から酸素を取りこみ、それを気管を通して肺胞まで運ぶ。そして運んだ酸素を血液の中に充填する。この一連の流れが呼吸器の役割の一つであるといえる。
酸素化とは、この一連の流れの結果として、酸素が血液に取り込まれることを指す。

また、血液の中に含まれる酸素のほとんどは、赤血球中のヘモグロビンに取り込まれており、酸素を取り込んだヘモグロビンのことを酸化ヘモグロビンという。動脈における酸化ヘモグロビンの割合がSaO2(SpO2)である。

改めて確認することでもないが、この基本的なところを正しく理解できているかが呼吸器を考える上で重要であるため、前置きとして記載しておく。

次項では、より呼吸器を理解しやすくするために、例えを使って説明してみる。

 

呼吸生理をイメージで理解する

さて、今までの内容は呼吸生理でもより基礎的な内容であり、人によっては退屈なものであったかもしれない。

しかし、上記の医学的知識を有していたとしても、臨床的場面において様々な解釈や意思決定をしていく際に、全く応用できていない医療従事者も多い。

これは呼吸器に限らず循環器でもそうだが、単にテストで点数を取るための勉強として生理学を学んできてしまった結果、本質的な意味を理解できていないために臨床応用が利かなくなったのだろうと考えている。

このような方は、他者から説明されると理解はできるのだが、いざ自分が説明する場合には難しく感じていることも多い。これについては、このブログを見てくれている方にも心当たりがあるかもしれない。

このような医学的知識を臨床に活かしきれない方の対策として一番効果的のは、生理学をビジュアル的にイメージことと考えている。

百聞は一見に如かずというわけで、早速ではあるが、このブログでは酸素化のプロセスを回転寿司に例えてイメージしていこう。

まずは回転寿司の様々な要素について、下の様に呼吸器に関連する要素と紐づけていく。

回転寿司ー呼吸器 対応図

 

板前の役割は流れてきた皿に寿司を乗せることである。つまりはヘモグロビンに酸素を受け渡すということだ。(ちなみに、皿が回っているレーンが血管であり、レーンを動かす動力源が心臓となる。よって、皿の流れが”循環”そのものとなるが、詳しい説明については割愛する。)

この場合、SpO2とは客に向かっている皿の内、寿司の乗っている皿の割合のことを指す。これが正常では96〜98%ということであり、回転寿司の例にすると、100枚皿が流れてきたら、その内2~4枚程度は空の皿があるという感じだ。

 

ちなみに呼吸機能が低下してSpO2が下がるメカニズムについて、回転寿司のイメージで例えると以下の様なケースが考えられる。
・寿司自体が少ないため、皿を満たすための十分な量が確保できないケース
・寿司はあるが、板前が皿に寿司を乗せられなくて、寿司の乗っていない皿が増えてしまうケース

専門的な用語を用いると、前者が換気障害・後者が拡散障害になるが、これらにの詳細については、またいつか深く掘り下げていきたい。

 

以上の例えについては、学生や新人が呼吸をイメージできるように、私が教育場面で用いているものである。

酸素化を概略化したイメージ図を以下に付け加えておくので、呼吸が苦手という方は、是非ともこの図をイメージできるようにしてもらいたい。今後は、これを基にして呼吸器疾患や臨床場面での応用方法について説明していこうと考えているので、理解を助ける良いツールになるはずだ。

 

 

ちなみに、実際の呼吸に関しては、二酸化炭素の排泄酸塩基平衡の調節など多彩な役割があるが、こと酸素化のみをイメージする上ではこの例え方が一番反応が良かったため、一旦隅の方に置いておいてもらいたい。

何かの参考になったのであれば幸いである。

 

 

スポンサーリンク

貧血の時はSpO2を確認すべき?

冒頭の問題の解釈に移ろう。

そもそも貧血とは、血中のヘモグロビンが減少している状態のことであるため、上記の例えで考えると、レーンを回っている皿の総量が少ないことを指す。

では、貧血の時はSpO2はモニタリング指標として適切か? 答えはNOである。

繰り返しになるが、SpO2とは客に向かっている皿の内、寿司が乗っている皿の割合を指している。

つまり、寿司の総量とそれを皿に乗せる板前の能力に問題がないのであれば、皿の量が増えようが減ろうが、寿司の乗っている皿の割合が変化することは少ない。

つまり、冒頭の問題の答えとしては3番のSpO2といえる。

貧血で息切れが起こることから、何となくSpO2が変化しそうな印象だが、上記のイメージを用いてもらえると間違いであることが容易に理解できるだろう。

では貧血が問題ないかというとそうではない。貧血により寿司が乗っている皿の割合は変化がないが、実際に客に届けられる寿司の量は減ってしまうわけであり、結果的に客の食欲(酸素需要)を十分に満たせない可能性が高くなる

その結果として起こる現象が息切れ頻脈というわけだ。回転寿司のイメージで言うと、客が食欲を満たせずにクレームが増えた結果、店全体が対応に追われてアタフタしている状態である。

「まあ息苦しいと言ってるし脈も速めやけど、SpO2が98%だから問題ないか!」

貧血をSpO2でモニタリングすることは間違いであるといえる。

もちろんのことだが、貧血のみでなく呼吸機能障害を合併してる場合のモニタリングついては、従来通りSpO2を測定する必要があることを補足しておく。

もしあなたの周りの人が貧血の時にSpO2を測定して問題ないと判断していれば、優しく間違いを指摘してあげよう。その際は、回転寿司の例えをお薦めする。

 

上記のように貧血時にSpO2をモニタリングすることは妥当ではないと述べたが、実は貧血の存在自体がSpO2の測定誤差を引き起こす可能性があると言われている。
この理由については、次回の記事にする予定の”SpO2の測定原理”にも関係するが、実際に貧血がある患者のSpO2の解釈には注意が必要かもしれない。ただ、文献的にはHb6以下で有意な誤差というものもあるため、ほとんどの症例では考慮する必要はないかもしれないが・・・

 

今回のまとめ

今回は、多くのコメディカルが臨床上用いやすいSpO2について解説してみた。

この記事によって少しでも、SpO2や呼吸機能の理解が深まれば幸いである。

次回は、引き続きSpO2特集として、案外知らない人の多い”SpO2の測定機器や測定原理”について深く掘り下げていきたいと思う。

SpO2測ったら無茶苦茶低い数字になってる!でも対象者ピンピンしてるんやけど大丈夫?みたいな経験を多くしている人は必見かもしれない。

それでは今回はこの辺で。

 

”SpO2の数値が低くなっても、自覚症状が全くなかったら、逆に焦るよね
(´-`).。oO

この記事を書いた人
りゅうぞう

生理学好きのギャンブラーPT
経済と投資について勉強中!!

全理学療法士向け
スポンサーリンク
スポンサーリンク
シェアする
スポンサーリンク
おっさん理学療法士はこう考える

コメント

タイトルとURLをコピーしました