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理学療法士と患者さんの適切な距離感とは?

全理学療法士向け
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こんばんは、卵屋です。

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はじめに

前回、私の記事(「なぜ理学療法士は勘違いしてしまうのか?」)で理学療法士のとるべきスタンスについて考えた。

今回はさらに踏み込んで患者さんとの「距離感」、理学療法士の適切な立ち位置について考える。

前回は「理学療法士は活動を選択するための情報を提供する役割」であることを論じた。あくまでも判断の主役は患者さん本人で、こちらが活動を制限したり強制したりすることは理学療法士として健全なあり方とは言えないと強弁した。

ではこれを言い換えて「理学療法士は患者さんの退院後の活動に口出しすべきでない」とするとどうだろうか。今度は逆に「それって本当にいいの?」「無責任すぎない?」と感じはしないだろうか。今回はそのあたりについて深く考えてみる。

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患者さんへの口出しは少ないほどよいのか?

まずは以下の図を見てほしい。

 

患者さんと理学療法士の関係性について私はこのように考えている。

方向性、目標設定、退院後の生活、介護保険サービス、福祉用具…などなど患者さんの生活に関する情報提供・提案については、理学療法士の「口出し」が多すぎても少なすぎても良くないと思っている。

口出しが多すぎる例(図の➁)については前回の記事(「なぜ理学療法士は勘違いしてしまうのか?」)で書いた。それは押しつけ、理学療法士のエゴや自己満足に過ぎない、自分たちの立場を考えるべきである、と強弁した。

さて、今度は少なすぎる場合について考える(図の➀)。

我々はまがりなりにも運動や生活動作についての専門家である(自分で言うのも恥ずかしいが)。患者さん・家族さんよりも多くの知識を有しており、運動や生活動作といったことに精通している。

そして当然のことながら患者さん・家族さんはそのあたりの情報を提供してもらえると期待している。

入院中の生活が分からない家族さんにきっちりと事実ベースで情報を提供することは我々の義務である。またご本人に押しつけや強制にならないように専門家としての提案・アドバイスは最低限行うべきで、「本人や家族が決めることだから」と情報提供すらしないのは理学療法士としての怠慢であり仕事放棄に他ならない。「無責任」と断罪せざるを得ないだろう。

念のために言っておくと、印象的にはこのような理学療法士は少ないと感じる。口出しするように教育を受けているから。むしろ前回の記事のように必要以上に口出しをして押しつけになっている理学療法士の方が多い印象である。

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理学療法士と患者さんの適切な距離感とは?

さて話を戻し、理学療法士の適切な立ち位置について考える。

 

患者さんへの口出しは多すぎても少なすぎても良くないことが分かった。ゆえにそのどちらにも当たらない図の➂の範囲が理学療法士の適切な立ち位置で、私はこの範囲内で提案や情報提供をするべきだと考えている。

最低限の義務を果たした上で、押しつけや自己満足にならず患者さんや家族さんに判断をゆだねる、これが理学療法士として適切な立ち位置だと思っている。

極端にどちらかに偏るのではなく丁度よい範囲を掴んだ上で提案やアドバイスをすべきである。

実はこの範囲を掴むのが結構難しいのだ。ある程度の経験が必要だ。この範囲は患者さんによって異なり、Aさんに対しては良かった伝え方がBさんにとっては押しつけに感じるということも往々にしてある。患者さんの性格や理学療法士との関係性(信頼関係)、入院に至る経緯や患者さんの社会背景などを踏まえたうえで提案しなければならない。

この判断・見極めを誤ると患者さんが不満を持ち、信頼関係が崩れリハビリに支障が出る。引いては患者さんにとって良い退院が実現できなくなってしまう。常に患者さんとの距離感を測りながら臨床に臨む必要があるのだ。

良い理学療法士とは?

 

さらに、この範囲内での口出しにおいても理学療法士によって差があると感じている。

私は、適切な立ち位置を守った上でなるべく口出し(情報や提案)が多い理学療法が良い理学療法士だと思っている(図の矢印)。踏み込みすぎは良くないと心得た上で、なるべく情報や提案を多くし患者さん・家族さんの選択肢を増やす。

これには、自分の立ち位置を客観的に捉えるクールでドライな視点と、「病める人へのシンパシー」とも言うべき患者さんの思いに寄り添うホットで熱い情熱、そしてその両者の適度な具合を測る卓越したバランス感覚が必要なのだ。

そんな理学療法士が私は好きだし、ソウイウモノニワタシハナリタイ。

私はまだまだ及ばない…。

正直なところ、理学療法をしていると日々の忙しさや心身の疲れからつい手を抜きたくなるときがある。

怠慢だ無責任だとお叱りを受けない程度の退院調整は経験を積み重ねるとそれなりに「出来てしまう」。患者さんから文句を言われることもない。みな「ありがとう」と言って笑って退院してくださる。

ただちょっと待て、卵屋!それでいいのか卵屋よ!いつからそんな腑抜けた気持ちで臨床に臨むようになったんだ!患者さんのより良い退院、引いては「幸せ」のために必死に考え行動に移す、そういう熱い気持ちを持って理学療法士になったんじゃなかったのか!

今一度自分を戒め、強い決意を持って前に進む今日この頃。

皆さんも今一度自分たちの立ち位置について考えてみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人
卵屋

ブログ管理人、投稿者。
おっさん。回復期病棟で働く理学療法士。

普段から仕事や日常の出来事について熱く語り合っているおっさん達で「せっかくだから自分たちの考えを世の中に発信していこうぜ」とブログをはじめました。
おっさん達の発信が誰かの役に立てば幸いです。
よろしくお願いします。

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