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現役理学療法士が教える「評価」の流れと実際4(統合と解釈)

若手向け
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こんばんは卵屋です。

現役理学療法士が教える評価シリーズ第4弾、ここまでの流れを振り返る。

 

過去3回の記事はこちらからどうぞ。

現役理学療法士が教える「評価」の流れと実際1(概要)

現役理学療法士が教える「評価」の流れと実際2(情報収集、検査測定、動作観察)

現役理学療法士が教える「評価」の流れと実際3(ニーズ)

今回はいよいよ「統合と解釈」について解説する。

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はじめに

今回は統合と解釈について解説する。

統合と解釈は評価の肝。前半部分で集めた情報を整理して、問題点、アプローチ点、目標などを定めていくパートである。

その理学療法士が何を考えて日々の治療にあたっているかということの核となる部分で、理学療法士の価値観や能力や個性などが最も反映される部分である。

それではさっそく解説にいこう。

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統合と解釈

ニーズの項でも述べた通り、理学療法の思考プロセスでは「階層性」を意識することがとても大事で、全てを並列に捉えて一緒くたに考えようとするとうまくまとまらない。

各階層は別の階層につながりを持つ一方それぞれの階層である程度独立していると捉えるべきである。(相対的独立性)

そのため統合と解釈をするにあたっては、それぞれの階層をパートごとに分けて段階的に考えていく。

HとDの関係

HandicapsDisabilitiesの関係のこと。

これは前回述べた「ニーズの把握」の部分である(現役理学療法士が教える「評価」の流れと実際3(ニーズ))。

本来はここでニーズの把握を行う。

「地球上で幸せに生きる」

↓ それをするには

「退院して家で幸せに生活を送る必要がある」

↓ それをするには

「セルフケア(食事、整容、排泄、更衣、入浴)が自立する必要がある」

↓ それをするには

「歩行が自立する必要がある」
ニーズ:「歩行の自立」
といった具合だ。

DとIの関係

DisabilitiesImpairmentsの関係。理学療法界では一般的に「評価」と言えばこの部分を指すことが多い。

HとDの関係で着目する動作を絞りこんだら、動作観察・分析を行い、それらを阻害している要因を考え仮説を立てる。

立てた仮説と検査・測定で得られる数値とを照らし合わせて「問題点」を抽出する。その一連の過程。この部分をロジカルに信頼性高く出来るかどうかで理学療法士の質が測られると言っても過言ではない。

 

ではどうやって考えていくのか。

このパートはロジックツリーというものを使って進めていくと整理しやすい。

以下に例を示す。

 

ロジックツリーは問題動作(分析動作)を設定した後の思考プロセスを表している。

問題動作:主にニーズの把握で抽出した動作を設定する。もちろん一つとは限らない。動作ごとにロジックツリーで考えていく。

実用性:問題動作を「なぜ問題がある」と思っているのか整理する部分。実習生や新人がよく陥りがちな「正常動作と違うから」だけで問題とするところを防ぐ役割をしている。「正常動作と違うことでなぜダメなのか?」を考えるパートである。

実用性にはいくつか要素があって、色んな分け方をしている書物を見るが、私は以下の6要素で分類している。

安全性:怪我のリスクがあるかどうか。歩行で言うなら転倒しやすいかどうかがメイン。
安定性:毎回同じ振る舞いができるかどうか。歩行で言うなら一歩ずつ毎度違う動きになっていないか。一歩ずつの動きが同じかどうかは結局安全性に繋がり、歩行においてはしばしば同義として扱われる。
持久性:長時間・長距離同じことが行えるか。
スピード:動作の速度。
社会性:見た目。主には「正常歩行」や世間一般の人の動作と比較した「見た目」上の問題を扱い、ポイントは本人が自分の動作についてどう感じるか。
機械的ストレス:特徴的にどこかに負担がかかり長期的に考えて二次障害が発現しそうかどうか。

どの相に問題があるか?:動作を分解し考えやすくする目的で行う。
正常動作との相違から機能的な問題点の仮説を立てる
①床反力、重心位置といった力学的側面
➁ROM・筋力といった運動学的側面
➂高次脳機能やCPGなどといった神経学的側面
について分析し仮説を立てることが望ましいとされているが、ほぼほぼ①➁の力学・運動学的な仮説にとどまる。また➁の運動学については①の力学をベースとしているため厳密な線引きは難しい。
仮説と検査結果との照合:仮説とROM、MMTなどの検査結果とを照合する。

 

動作分析からの仮説を立てるパートについて歩行を例に記しておく。

【問題相】:荷重受け継ぎ期
【分析と仮説】:
本症例は左の初期接地は踵からつかず足底全面で接地する。また接地後から反対側の足が浮き上がるまでに時間を要す。上記2つの現象について分析する。
本来、正常歩行における初期接地は踵からなされ、ヒールロッカー機能により垂直の力が前方の力へと変換されることで前方推進力が維持される。一方でそれらの機能を果たそうと思うと、強く素早い衝撃(0.02秒で体重の約60%、歩行周期0~12%の間に体重の約110%に達する)に対して各筋が協調的に働く必要があり、それらの筋が発揮できないと可動域やつま先を持ち上げるだけの背屈筋力を有していても、あえて踵からつくことはしない(強い衝撃により膝折れなどが生じるため)。また筋発揮に不安があるとスムーズな荷重移行が困難となり反対側の足が浮き上がるまでに時間がかかる。
荷重の受け継ぎ期で必要な筋力は、前脛骨筋:37%MMT、大腿四頭筋:21~38%MMT、大殿筋下部線維:24%MMT、大内転筋:40%MMT、半膜様筋:27%MMT、半腱様筋:19%MMT、大腿二頭筋長頭:12%MMTとされており、本症例の筋力測定結果と比較すると大腿四頭筋、大殿筋が機能的な要因と考えられた。
(Jacquelin Perry(2012),ペリー歩行分析 医歯出版 参考)
【機能的な問題点】:大腿四頭筋・大殿筋の筋力低下

IとIの関係

ImpairmentsImpairmentsの関係。

DとIの関係で抽出した機能的な問題点の原因を考察するパート。

例えば、股関節外転筋の筋力低下が問題点として上がった場合に、それはなぜ起こっているのか?を推察する。

 

疾患情報や手術、既往歴などから予測し、

「大腿骨頚部骨折の手術をして筋肉を切っているので一次性の筋力低下だろうな」、
「腰椎すべり症の術後で両側性に出ていることから神経性の麻痺だろうな」、
「外転筋のみならず下肢全般の筋力が低下しているから廃用性だろうな」、

といった具合に機能的問題点の原因を探っていく。

 

なぜそんなことをするのか?

今後の改善の見込みを予測するためである。
引いてはアプローチする場所の優先度を判断するためである。

極端な物言いになるが、トレーニングにより改善見込みのある部分には積極的に機能訓練を行い、改善が見込めない部分に関しては代償的な方法を検討する、そんな治療方針を決めていくために必要なパートである。

 

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まとめ

以上のような思考過程を踏まえて、集めた情報を整理していくのが統合と解釈の本質。

そして社会的不利→能力低下→機能障害と、機能的にアプローチする部分を定めていくのが大まかな流れ。

ここでも大事になってくるのが階層性である。物事を整理しようと思うと常に階層を意識してどの部分の話をしているかを一歩引いて捉えられるようになることが肝心だと改めて念を押す。

 

さてさて、では実習生や若手PTは気になると思うが、実際にここまで(実習のレポートのように)普段から全て網羅してやっているかと問われると……やっていない。というより出来ていない。
あくまでこう考えることを理想として、アプローチの肝となる部分や大きな方針を定めるポイントとなる部分について考えている程度…。

実際はもっとおおざっぱだったり、ある程度決まったやり方(プログラム)に乗せて患者さんに合わせて微調整する程度でやっているのが実情です…(すいません)。

それでもある程度出来てしまうのがこの理学療法という学問の「学問としての不完全さ」を物語っているのではないだろうか!(強引な責任転嫁)。
だからといって一連の流れについて知らなくていいということを言いたい訳ではない。基本的に上記のような考えで進んでいくということを知っているから今でも出来ているのかもしれない!(強引な自己肯定)。
あーラーメン食べたい(急激な食欲)。

次回はICFについて考えていく。

お楽しみに。

現役理学療法士が教える「評価」の流れと実際5(課題・アプローチ点抽出、ICFについて)

 

この記事を書いた人
卵屋

ブログ管理人、投稿者。
おっさん。回復期病棟で働く理学療法士。

普段から仕事や日常の出来事について熱く語り合っているおっさん達で「せっかくだから自分たちの考えを世の中に発信していこうぜ」とブログをはじめました。
おっさん達の発信が誰かの役に立てば幸いです。
よろしくお願いします。

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