こんばんは卵屋です。
前回の記事「現役理学療法士が教える「評価」の流れと実際1(概要)」で理学療法評価の概要について述べた。
今回は各論、理学療法評価の詳細といくつかの補足、また実際に臨床で働く現役理学療法士だからこそ分かる「裏情報」をお伝えする。
なお、私は回復期病棟に勤務する理学療法士であるため、下記の内容は基本的に回復期病棟入院患者さんに対する評価の流れと捉えていただければ幸いである。
急性期や生活期でも基本的な流れは同じであるが、病期により重きを置く部分が違ったり、関われる時間の制約上、若干の違いがあることを先に申し伝えておく。
はじめに
さて、前回、理学療法の評価は大きく分けて
1.「客観的な情報を集めるパート」(前半)
2.「理学療法士自身が考察するパート」(後半)
に分かれる、と述べた。
例にもよって話が飛んだ。
1.「客観的な情報を集めるパート」
2.「理学療法士自身が考察するパート」
の話だった。
今回は1.「客観的な情報を集めるパート」について解説していく。
情報を集めるパート(前半)について
このパートでの大事なポイントは「誰がやっても同じ情報が集まってくるようにすること」である。現実的には難しいがそれを理想として行うことが望ましい。感情や思い込みを出来る限り排除し、淡々と必要な情報を得ていくことが大事である。
それでは一つずつ解説していく。
情報収集
実場面ではカルテからの情報収集がメインである。
氏名、年齢、身長、体重などから始まり、疾患情報、現病歴、画像所見、各種検査データ、既往歴…と続く。
さらに、家族構成、介護保険情報、利用サービスなど社会的な情報も収集する。
問診
医療面接とも言う。患者さんから直接得る情報である。
主訴、HOPE、現在(前院)の生活、入院前の生活…などがその内容だ。新たな情報を得ると同時に、カルテ情報と照らし合わせて情報の正確性を上げることも目的の一つである。
さらに返答内容や表情、声のトーンなどから性格、キャラクター、現在の精神状態、自分との距離感などを推測することも大きな目的である(どちらかと言うとこっちの目的の方が強い)。
検査・測定
関節可動域、筋力、形態計測、運動麻痺テスト、感覚テスト、腱反射テスト、各種歩行テスト…などである。一般的に「評価」と聞いて想像する項目たちである。
どの項目を測定するかは評価に割ける時間や患者さんの状態、疾患の特徴などを加味して優先度の高いものを選択していくことになるが、情報として多いに越したことはない。
回復期病棟ではこのあたりに時間を多く割けることがメリットの一つである。
後の統合と解釈で問題点や課題に直接影響しないからと言って決して無駄な評価ということはない。「問題ない」ということが分かることも大事な評価であり、また初期評価の段階で測定していたことが中間評価で活きることも臨床ではままある。
故にこれらは出来る限り正確に、出来る限り再現性の高いやり方で測定できることが望ましい。
のだが…
動作観察
立ち上がり観察、歩行観察…など、言葉の通り動作を観察することである。理学療法士である以上、基本動作が観察対象になることが多い。
動作を観察する目的は、
1.動作の実用性を把握するため
2.機能的な問題点の仮説を立てるため
の2つ。
「動作観察」と「動作分析」は厳密には区別されるが、臨床場面ではほぼ同時に行われる。
「観察」だけして「何も考えない理学療法士」はいないからである。観察しながら「あ~まだ転倒リスクが残っているな」とか「ムム、思ったより速く歩けるな」とか「トレンデレンブルグ徴候が出現したな、股関節外転筋が弱っているのかな」とか何かしらは考えているからである。
動作観察の具体例について記しておく。脳卒中左片麻痺の症例を例に書いてみる。
見守りで歩行可。歩行スピード遅い。終始足元を見ながら歩く。歩行リズムは不正、左右の立脚時間には明らかな差があり左単脚支持時間が短い。
左立脚期の重心の軌跡は倒立振り子様とならず重心の上下移動は少ない。矢状面上、前方への推進性が乏しく後方へふらつく場面が観察される。左遊脚期に左足先が床に引っ掛かり前方へ突進様にふらつく場面あり。前額面上、左右の重心移動は一定せず左への重心移動が乏しくすぐに右へ移す場面が多い。また左への重心移動が多いときは立脚とともに体幹が左側屈していることが多い。
各期の詳細な観察:
・左荷重の受け継ぎ期(立脚初期~荷重応答期):踵からの接地が得られず足底接地。接地後、右足が浮き上がるまでに時間がかかる。ヒールロッカーは機能せず接地後前方への推進力は低下。
・左単脚支持期(立脚中期~立脚後期):膝はエクステンションスラストパターンを取り、膝のロックで体重を支持。立脚後期での下腿の前傾は乏しく、体幹前傾・股関節屈曲を認める。
・左遊脚期:左下肢の素早い動きは乏しく振り出しに時間がかかる。矢状面上、足部は下垂足、膝関節の屈曲が乏しく股関節の過度の屈曲とぶん回し様の動きにより振り出す。前額面上では骨盤の引き上げとぶん回しによる振り出しを認める。
まとめ
さて、長々と書いたがここまでが評価の前半部分。情報を集めるパートである。
教科書的な評価の流れと、それらに関係する裏情報についてお伝えした。
正直なところ、ここまではあまり理学療法士によって差が出ない部分である(検査の正確性やどの項目を収集するかなどには差が出るが)。
次回は後半部分、たくさん集まった情報を基に思考を組み立てていくパート。ここからが理学療法士によって考えに大きく差が出る部分。
是非お楽しみに。
ありがとうございました。
続きの記事→現役理学療法士が教える「評価」の流れと実際3(ニーズ)
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