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現役理学療法士が教える「評価」の流れと実際1(概要)

若手向け
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こんばんは卵屋です。

今回は実習生や若手理学療法士さんたちの参考になればと、理学療法評価の流れを現役おっさん理学療法士の頭の中をオープンにしながら整理していく。

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理学療法評価とは?

理学療法評価とは、理学療法という一連の過程のなかで、患者に関する諸々の情報を収集し、それをもとにその障害像を整理・分析し、治療目標の設定や治療プログラムの立案に役立てようとすることである。

(嶋田智明(1997)、理学療法評価―そのクリニカルアプローチ、株式会社メディカルプレス より引用)

「患者さんがどういう状態かを把握し、何を目標に、どういう治療をしていくかを決定する作業。」

分かりやすい言葉で言うとそんなところだ。この作業はとても大事で「理学療法の9割は評価だ」と言っても過言ではない(過言です)。

世間的に理学療法士の仕事と言えば、マッサージなどの手技や治療が中心のように思われがちだが、実はそこに至るプロセス、つまり「評価」が大切で、訳もわからないままなんとなくやっていては良い結果につながらない。

厳密に言うと、なんとなくでやっていても良くなる人は良くなるし、運動していれば大体よくなる、が、再現性高く良い結果をもたらしたり、「良い退院」を迎えてもらおうと思うと理学療法士の関わり、とりわけ「評価」の部分がとても大切なのである。

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理学療法評価の概要

理学療法の評価は大きく分けて

1.「客観的な情報を集めるパート」

2.「理学療法士自身が考察するパート」

に分かれる。

一般的に、

前者は、情報収集、問診、検査・測定、動作観察…などが含まれ、

後者は、ニーズの把握、統合と解釈、課題抽出、目標設定、治療プログラムの立案…などが含まれる。

トップダウンとボトムアップについて

理学療法界で評価を勉強する際に必ず出てくる「トップダウン」と「ボトムアップ」という用語について触れておく。

トップダウンとは、先に動作や活動状態を確認し、問題がある部分を予測して評価(検査・測定)を行う方法。
ボトムアップとは様々な評価(検査・測定)をひと通り実施し、その結果を組み立てながら問題点を見極めていく方法。

理学療法界では一般的にこのような使われ方をする。

トップダウンは効率が良く時間が短く済むというメリットの反面、熟練していないと評価の漏れが出てくる可能性があるというデメリットがあるとされており、

ボトムアップは評価の漏れが少なく済むメリットがあるが、時間がかかるというデメリットがあるとされている。

 

私は未だにこの2つの用語が正確に理解できていない。正直なところよく分からない。

というのも、それぞれの言葉の言わんとすることは分かるが、実際の臨床に当てはめたときにうまく説明できない。

「これらは評価における特定の領域の思考過程(例えば能力低下と機能障害のつながり)においてのみ使われる概念なのか?」、「評価をする際にどちらか片一方の方法しか選択してはいけないのか?」など疑問でいっぱいなのだ。

「学生の間は時間があるからボトムアップでやりなさい。熟練してくるとトップダウンでできるようになるから。」

実習のときは指導者からはこんなことを言われるのが通例となっているが、この言葉もなんだか腑に落ちない。実際に働いてみて、あー確かにそうだったな~とは全然ならない。むしろますます疑問が湧いてきている。

 

例えば、大腿骨頚部骨折術後の患者さんを評価する際に、ボトムアップで評価するからといって、全身の関節の可動域・全身の筋力評価を細かく検査するかと言われるとまずそんなことはしない。

一方で動作に直接関係するかは分からないが、股関節周囲の角度や筋力は一通り測定する(術側も健側も)。

この時点で「一通り」評価するとはいえ、ある程度評価内容を絞っていることになるのだが、これはボトムアップ?トップダウン?どちらになるのだろうか。

 

逆にトップダウンの考えで、先に立ち上がりや歩行を観察して、能力低下と機能障害の結びつきが強そうな部分だけ(例えばトレンデレンブルグ徴候が観察されたので術側の股関節外転筋力を検査する等)の検査を選択するかと言うと、実際場面ではそんなことはなく股関節まわりは「一通り」評価するのが通例だ。

なぜなら仮説が外れた場合にまた他の部分を測り直さなくてはならず却って効率が悪いから。

予測や仮説を立てる流れはトップダウンの考え方ですすめるが、実際に検査・測定する際は関係しそうな部分をおおよそ評価する、これはトップダウン?ボトムアップ?

 

さらに、理学療法評価は言うまでもなく「能力低下」と「機能障害」の話だけでなく、「参加制約」と「活動」のつながりも考えないといけないし背景因子も考慮に入れながら思考を組み立てていく必要がある。

情報をたくさん集めて物事を組み立てていくという評価の大枠を捉えるとボトムアップの考えで思考を展開していると言えそうだが、一方でその中のニーズを把握する部分は

自宅での生活をイメージして

自宅に帰るために必要な生活動作は?

そのために必要な基本動作は?

基本動作を阻害している機能的な要因は?

 

トップダウンの思考を使っているとも言えるのではないか。このあたりはどう整理するのか…。

このように評価全体をどちらかで括ろうとするとツッコみどころが多くて整理が追いつかない。

とすると、これは「どちらの要素を多く使っているか」という割合の問題なのか。そうならばそもそもそれを決める必要性はあるのだろうか…?

 

何が言いたいかというと「僕はトップダウンで評価している。」「いや私はボトムアップ。」と評価全体を一括りにして100か0で区別するようなものではなくて、「評価する過程においてはみんなトップダウンもボトムアップも適材適所で使い分けながらやってるんじゃね?」である。

トップダウン・ボトムアップの概念はあってもいいし、それを理学療法評価に適用してもよいが、「評価全体を括って『どちらを用いて評価する』としない方がよいのではないか」と考えているのだ。評価の部分部分を切り取って、ここはトップダウンの考え方、ここはボトムアップの考え方と表現するのが最適なのではないかと思っている。

このあたりに詳しい方がいれば頭の固いおっさん理学療法士に是非教えてください。

さてさて、話がだいぶ飛んでしまった。評価の話をするときに必ず出てくる言葉なので触れたが、私自身がよくわかっていない事情もありこの先はトップダウン、ボトムアップという言葉は使わずにすすめていく。

理学療法評価の全体像をイメージする

詳細な話にすすむ前に「評価」とはどういった作業なのかをその全体像がイメージできると理解しやすい。

理学療法評価は「料理」と同じだ。

これは、私が実習のときに指導者に教わった考え方で今でもそのイメージを持って実践している。

冒頭の2つのパート、

1.客観的な情報を集める

2.理学療法自身が考察する

「カレー」を作る工程に例えて考えてみる。

1.客観的な情報を集める=買い出し、下ごしらえ、仕込み

カレーを作るためには食材を買いに行かないといけない。また買ってきたらすぐに煮込むのではなく食材の皮をむいたり、一口大に切ったりと仕込みや下ごしらえをしなければならない。

理学療法評価においても、いきなり思考を展開して「はいこれが目標!ここが課題!」とできるはずもなく、情報を集めて、整理する必要がある。

美味しいカレーを作るには、「適した食材」を集めなければならないし、「丁寧な仕込み」が必要になるのと同じで、理学療法評価においても「適切な情報」を集めて「丁寧な検査・測定」をする必要がある。

2.理学療法自身が考察する=炒める、煮込む、味付け

買い出しや仕込みを終えるといよいよ料理の要、炒めたり煮込んだりする工程に入る。仕込んでおいた食材をもとに適切な火加減で炒め、煮込み時間を調節しながらどんどん食材からカレーへと変化させていく。

理学療法評価も同様、集めた情報をもとに思考を展開ながら物事を組み立て、課題やアプローチ点を抽出していく。また目標を設定し治療プログラムを立てていく。

いくら高級な食材を使って丁寧な下ごしらえをしても、このパートで火加減を誤ったり煮込み時間を間違えれば当然ながら美味しいカレーは出来上がらない。それと同様、理学療法評価においても正確な情報を集めて、丁寧に検査・測定ができても、ここから先の思考する過程がうまくいかないと適切な治療方針が立てられない。

まさに評価は料理なのである。

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理学療法評価を行う上で最も大事なこと

評価の全体像がイメージ出来たところで理学療法評価を行う上で最も大事なことについて述べる。

理学療法評価を行う上で最も大事なこと、それは、

「階層性を整理する」ことである。

これは意外と見落とされがちだが、とても大事なポイントである。

例を出して説明する。

例えば大腿骨頚部骨折術後の患者さんを評価することになった。

一通り情報を集め、検査・測定をした。動作も観察した。これらを頭の中で整理し統合と解釈をしていく。

旧実習ならばレポートを用いて文字に起こして整理していくことにいなるが、実習生が、

 

● 情報収集
氏名:A氏、年齢:70代
左大腿骨頚部骨折
・手術日:×年×月×日  術式:人工骨頭置換術
合併症:糖尿病
・検査測定
● 関節可動域(右/左)
股関節屈曲=120°/100° 膝関節屈曲=130°/115°
・筋力(MMT=右/左)
股関節外転=5/3 膝関節伸展=5/3
[動作観察]
・立ち上がり
・歩行

このように書面に起こしていた場合、その内容や検査の正確性云々の前にとても「見にくい」と感じないだろうか。

まったく同じ内容でいくつか見出しを付け加え以下のように整理すると、

 

● 情報収集
 〇 基本情報
  ・氏名:A氏
  ・年齢:70代
 〇 疾患情報
  ・主病名:左大腿骨頚部骨折
  (手術日:×年×月×日 術式:人工骨頭置換術)
  ・合併症:糖尿病
● 検査測定
 〇 関節可動域(右/左)
  ・股関節屈曲=120°/100°
  ・膝関節屈曲=130°/115°
 〇 筋力(MMT=右/左)
  ・股関節外転=5/3
  ・膝関節伸展=5/3
● 動作観察
 〇 立ち上がり
 〇 歩行

 

随分見やすくなったのではないだろうか。

階層性を整理するとはまさにこのことを言う。

大見出し(ここでは「情報収集」、「検査測定」、「動作観察」)、中見出し(ここでは「基本情報」、「関節可動域」、「立ち上がり」など)を揃え、インデント(字下げ)で見やすく整理する。この情報がどこのパートに属している情報なのかが一目で分かるようにする必要がある。

大見出しや中見出しの内容が人によってまったく同じになるとは限らないが、少なくとも上の内容で「●情報収集」と「●関節可動域」が同じ階層(次元)にあるのはおかしいと誰もが思うはずだ。

これは書面の書き方だけの問題ではなく、頭の中でどう整理するかに繋がる大事なことで、書面にこのように整理するということは書いた人の頭の中もそうなっていると捉えてまず間違いないだろう。

そのような整理をしていると、いくら正確な検査・測定や細かな動作観察ができても、良質な統合と解釈はできない。思考がバラバラになり、どこの引き出しからどんな情報を取ってきてよいかわからない。さらに考察する部分においても階層を分けながら考えていく必要があるため、そこが整理されていないと「ぶつ切り」の思考になりうまくまとまっていかない。

さらに言うと、臨床の場で理学療法士同士が会話をする際にも、階層性が整理されていないことで不毛な議論が広げられることが多い。

一方が患者さんの「ニーズ」について共有しようと話を切り出したのに、もう一方は「能力障害の機能的な原因追及」の話をし出し、議論がうまくかみ合わない。連想ゲームのように表面上の言葉をすくい取って、あたかも深い議論をしているかのような雰囲気でお互いがうーんと首をひねる場面を死ぬほど見てきた。

階層性の整理ができていないと、どのパートのどの次元の話をしているかが把握できず、「Q.」に対して適切な「A.」が返せない。

と、以上のように階層性の整理というのはとてもとても大事なことで、細かい知識や動作観察云々の前に最も身につけて欲しい能力なのである。

※故に実習生や若手の理学療法士には、やはり「レポート」を作成することをおすすめする。新実習制度になり「レポート」の作成は消滅しつつあるが、実習中でなくても振り返りや自己学習のために是非レポートを作成して思考を整理することをおすすめしたい。その際には是非「階層性の整理」を意識してみてください。

 

さて、今回は理学療法評価の概要について書いた。

長くなったので細かな評価の流れは次回以降にまとめようと思う。

ではまた次回。

 

続きの記事→現役理学療法士が教える「評価」の流れと実際2(情報収集、検査測定、動作観察)

 

この記事を書いた人
卵屋

ブログ管理人、投稿者。
おっさん。回復期病棟で働く理学療法士。

普段から仕事や日常の出来事について熱く語り合っているおっさん達で「せっかくだから自分たちの考えを世の中に発信していこうぜ」とブログをはじめました。
おっさん達の発信が誰かの役に立てば幸いです。
よろしくお願いします。

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