いよいよこのシリーズもクライマックスを迎える。
これまでに、①仮説設定の方法と、②仮説検証のタイミングについて触れてきた。
ここからは、最後のパート、仮説検証作業と結果からの推論に焦点を当てて進める。
ただ、言い訳となるが、この記事はちょっとした実験的な側面がある。
なぜなら、”推論”という頭の中で行われる作業を言葉にすることは困難を極めるからだ。したがって、意味不明な箇所があるかもしれないが、個人的にはうまくまとまっていると思っている。
できれば、読んだ後の感想を教えていただけると大変ありがたい。それでは、さっそく始めていく。
仮説検証作業に向けた注意点
まず、仮説検証作業について説明する前に一つ重要なポイントを挙げる。
この仮説検証作業を精度よく行う主な目的は、現時点で担当している対象者への最適なアプローチを探すことではなく、次に担当する対象者へのアプローチを改善するためである。
つまり、自分が現在担当している対象者への介入経験を、次の対象者への活用するための手法こそが、「仮説検証作業と結果からの推論」なのだ。
そのことを念頭に置きつつ、これからの記事を読み進めていただきたい。
そもそも仮説検証作業とは、あらかじめ立てた仮説が正しいか否かを判断する作業である。これはまさに文字通りの意味だが、この作業の中で重要な点を挙げると次のようになる。
② 仮説検証作業のタイミングと内容は事前に設定する
③ 結果を客観的に判断できる指標にする
さて、これらを一つずつ詳細に解説していく。
① 介入前と介入後で同じ作業を行う
療法士としての介入は、対象者に何らかの変化をもたらすことを目指す行為である。
例えば、ある化学反応において「薬品Aと薬品Bを混ぜると薬品Cが生成されるのでは?」という仮説があった場合、薬品Cが生成されたか否かを確認することが仮説検証作業となる。この場合、もともとあった薬品Aは存在自体が変化している。
しかし療法士としての場合、ある患者Aに対して治療Xという介入を行う際、その患者Aという個体自体が変化するわけではなく、患者Aが持つある特定のパラメーターが変化するのだ。
したがって、基本的な仮説検証作業としては、患者Aが治療Xによりどのようなパラメーターに変化が起こるかを予測し、それを検証することが求められる。
ゆえに、仮説検証作業は、治療X前後で同様の内容を行い、その結果の差を明確にすることが必要となる。
では、介入前に歩行ができなかった人に対して、介入後に歩行評価をするのは仮説検証作業として不適切だろうか?
この問いに対しては、介入前は歩行ができなかったという事実が、介入後は歩行ができるという変化を明確に示している。実際には介入前に歩行を行っていないが、その差は評価することが可能である。
そのため、不適切ではない。むしろ、その変化が明確でわかりやすいと言える。
ただし、この例の場合においては、歩容の評価は介入前後での比較ができない。そのため、もし歩容を仮説検証作業として設定するのであれば、必ず事前にどのような歩容になるかを明確にし、それに関する仮説検証作業を設定する必要がある。
つまり、仮説検証作業の基本としては、介入前後で何らかの差を確認できることが重要となる。
② 仮説検証作業のタイミングと内容は事前に設定しておく
これについては、前回のブログで説明した通りだが、重要な点を再度確認する。
①で述べたように、仮説検証作業では介入前後で比較可能な内容が求められる。そのため、仮説検証作業の内容は、自動的に介入前に決定されるべきである。
次に、仮説検証作業のタイミングについては、介入前に設定することが必須だが、タイミングそのものは個々に自由に設定して構わないと考えている。
例えば、介入によって約1週間後に変化が見られると予測する場合、仮説検証作業のタイミングは1週間後に設定すると良い。
この「1週間後に変化が見られる」という点については、必ずしも科学的なエビデンスが必要ではないと考えている。より重要なことは、仮説設定と検証作業を繰り返すことで自身の仮説の精度を高め、対象者に対してより良い介入を行えるようになるための機会を増やすことだ。
③ 結果を客観的に判断できるものにする
”結果”とは、仮説検証作業による結果を意味し、設定した仮説の正否を判断するものである。
後に説明するが、仮説検証作業からの推論を行うためには、この結果が客観的に判断できるものであることが必要である。
客観的に判断できると言うと、多くの人は検査測定結果や数値データ、つまり臨床研究などを思い浮かべるかもしれない。
もちろん、数値化できることは理想的で、検査測定をルーチンとして行う環境は素晴らしいと思っている。
しかし、ここでの”客観的”とは、数値だけでなく、他人が見ても同じように判断できることを意味しているため、必ずしも検査測定を行う必要はない。
具体的な例としては、
介入前は両手を支えなければ立つことができなかったが、介入後は両手を支えずに立つことができるようになった。
介入前は立っている状態で足踏みができなかったが、介入後はできるようになった。
以上のような例はかなり単純化しているが、数値だけでなく できるorできない という評価が、より客観的な仮説検証作業となる。
さらに、これらの例においては、椅子の高さを低くする、足踏みの範囲を指定するなどの条件を設定することで、仮説検証作業により深い意味合いを付与することが可能だ。
また、「痛みがなくなった」や「怖さがなくなった」なども、”訴え”は患者の主観的なものだが、”訴えの有無”は客観的なものと判断できる。
これに関しては、条件設定が難しく、場合によってはどこぞの手技系のセミナーの、「軽くなったでしょ?」「確かに何となく軽くなりました!」みたいなやり取りを生みかねない。(最近は少なくなった?)
当たり前だが、これらのやり取りは私が述べる仮説検証作業ではないが、条件設定を適切に行うことができると、仮説検証作業として有効かつ簡便に行える手段となりえる。
まとめ
今回、仮説検証作業の結果について、その取り組みや考慮すべきポイントについて論じてきた。しかし、肝心の”推論”については触れられていない。
当初の予定では、結果からの推論についても本稿で語るつもりだったが、トピックの長さを考慮し、次回に延期することとした。
個人的には次回がもっと興味深い内容になると感じているので、関心がある方はぜひともご覧いただければと思う。
それでは、今回はこの辺で!
”自身の思考回路を言語化するのは難しいけど、いい機会だなとも思う”
(´-`).。oO
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