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臨床推論における仮説設定-検証作業 ②仮説検証のタイミング

若手向け
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以前のブログにて、仮説設定の方法について述べた。

臨床推論の中では、仮説設定が重要であり、その仮説に基いて事象の解釈をおこなって行くことで、より確からしい判断と将来に繋がる経験が得られることができる。

仮説設定-検証作業における重要なポイントとしては、以下の3つが挙げられる。

 

① 仮説設定の方法

② 仮説検証のタイミング

③ 仮説検証作業と結果からの推論

 

前回については、① 仮説設定の方法について解説したが、少し期間が空いたため、ざっくりと仮説設定のポイントについておさらいしてから、今回の本題に移ろう。

 

 

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仮説設定の方法について

前回のおさらいになるが、仮説設定の際は以下の項目を押さえて進めていく。

① 対象者の問題点のメカニズム

② 仮説検証方法の設定

③ 仮説検証作業の結果の予測

簡単に一つずつ説明していく。

 

① 対象者の問題点のメカニズム

一般的な理学療法の結果と相違なく、対象者の問題点とその原因とされる因子についての関連性について仮説を立てることを指す。理学療法評価の結果として出力されるものである。

ここでの重要な点としては、その結果の妥当性がかなり高いと考えたとしても、真理であると認識しないことだ。

どんなに正しそうな仮説であっても、仮説でしかないのであれば棄却される可能性も存在する。

「かなり正しいとは思うけど、もしかしたら違うかもしれないな・・・」ぐらいのテンションがちょうどいい。

 

② 仮説検証方法の設定

理学療法プログラムでは、理学療法評価に基づいて理学療法介入を行い、その結果ついて再評価を行う。この再評価によって、自身の理学療法評価やそれに基づいた理学療法介入について検証する。

この”仮説検証方法の設定”についても概ね同様の意味合いではあるが、一つ注意点がある。まず例を挙げる。

”歩行能力低下という問題点に対して、下肢筋力低下が原因であるという仮説を立て、それに基づいて下肢筋力訓練を実施。この仮説の検証のために、歩行能力の変化について再評価した。”

この例の場合、仮説検証作業を、歩行能力低下という”問題点の変化”のみに焦点を当てている。こういった推論をする療法士は少なくないが、元々は”下肢筋力低下によって歩行能力が低下している”という仮説であるため、この仮説全体を検証するべきである。つまりは、歩行能力の低下のみでなく、実際に下肢筋力低下も改善したかどうかも同様に評価すべきである。

 

③ 仮説検証作業結果の予測

これについては、可能であれば程度の話だが、仮説検証方法を設定したのであれば、将来的に仮説検証作業を行った場合の結果についても予測を立てることもできるのではないかということだ。

理学療法評価の結果から、ある仮説を立てた場合、その仮説が正しかった場合のプロセスや、仮説が正しくなさそうな場合のプロセスについても予測をしておく。

例えば、下肢筋力低下によって歩行能力低下があると仮説を立てた場合、その仮説が正しければ、下肢筋力訓練を進めることによって少しずつ歩行能力が改善してくるというプロセスをたどるが、そこから逸脱したプロセスとなった場合は、仮説自体が正しくないかもしれない。

最終的には②での仮説検証方法を適切なタイミングで行うのだが、その仮説が正しくなさそうな経過をたどった場合は、別のシナリオを想定し、早めに方針転換を行なえるとなお良い。

以上が前回のブログのおさらいになる。

という訳で、本題に進んでいこう。

 

 

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仮説検証のタイミングについて

以下に理学療法プロセスの過程について示すが、一般的には仮説検証は再評価のタイミングで行うと考えられている。

 

いわゆる症例報告などのカチッとしたプロセスで行う場合に関しては、理学療法評価で仮説設定し、再評価のタイミングで仮説検証することが正解だろう。

 

ただ、私が思う臨床推論に用いるための仮説検証のタイミングに関して、自身で決めても構わない。重要なポイントとしては、どのタイミングで仮説検証を行うかを事前に設定しておくところだ。

この仮説検証のタイミングについて、客観的根拠を基に設定する必要があるかどうかについて述べよう。

 

結論から言うと、客観的根拠は必須ではない。ただ主観的でもある程度の根拠は欲しい。

では、なぜ仮説検証のタイミングに客観的根拠が必須ではないかについて述べる。

 

そもそも、なぜ仮説設定ー検証作業が臨床推論過程において重要かという点だが、対象者の問題点を解決するための方法として、自身の介入の期待値を上昇させる手段であると考えている。

その点について少し述べる。

 

 

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仮説検証作業の必要性とタイミング

話は少し変わるが、仮説検証作業の重要性を考えていこう。

 

概念的に捉えるために、理学療法プロセスをRPGゲームでの宝探しで考えてみる。

広大なエリアにおいて、ゲームをクリアするために必要な宝を探すとしよう。(ドラクエで言えばロトの剣みたいなものだ)

その宝を見つけるためには、様々な情報を得つつ、特定の目星を付けながら、徐々にその宝の場所を目指していく。

なんの情報もないまま進んでいくと、当たり前の話だが一向に宝は見つからないだろう。ただ情報をすべて揃えてから進んでいくのも時間がかかる。

そこで重要なことは、ある程度目星となる領域を特定して、そこに対して進んでいくことだ。

ただ、目星となる領域が異なる可能性もある。その場合も想定しつつ、適宜情報を再収集し、宝の場所に近づいていく。

実際に宝の場所に近づくと、よりその場所に近づくために、情報の精度を高め、細かくその場所を特定し、再度進んでは目標を修正し、宝を目指すという流れが重要となる。

この例において、宝は対象者の問題点の解決を指し、そこに向かって進むことは、理学療法介入を指す。情報はもちろん検査測定や動作観察など、問題解決に繋がるありとあらゆる情報を指す。

 

では仮説検証作業としては何に当てはまるかだが、私としては2つの意味合いで考える必要があると思っている。

①:現在地と宝の場所までの距離

②:自身が思ったように進めているか

一つ目に関しては、宝の場所に近づいているかどうかをチェックするだけであり、臨床現場においては問題点がどれだけ解決されたかを評価することとなる。

二つ目に関しては、自身の立てた仮説の進捗状況に関する検証作業となり、ここが意外と重要であると思っている。

 

仮に歩行能力低下の原因が下肢筋力低下であると仮説を立て、下肢筋力訓練を進めたとした場合、仮説に基づいて考えると大なり小なり下肢筋力の改善は認めるはずである。

もし下肢筋力に変化がないのであれば、介入方法が間違っているか、そもそも改善の余地がなかったかなど、進み方自体を変更する必要がでるかもしれない。

そのためには、ある程度変化がでそうな時期を自身で設定し、仮説通りに進んでいるか検証する必要がある。

 

「下肢筋力訓練を行ったら、おそらく週間ぐらい継続すればある程度筋力が改善し、歩行能力にも変化が確認できると考えるので、仮説検証作業のタイミングを1週間後に設定しよう。」

この程度でOKである。

そして1週間後の仮説検証作業の結果、仮説通りに進んでいそうであれば、宝の場所(問題点の解決)に近づいていると考え、引き続き同様の訓練を進めるか、もしくは宝の場所との位置関係を整理し、進路を変更することも大事だろう。

この様に、自身の仮説通りに進んでいるかどうかを確認しつつ、現在地と宝の場所との位置関係を把握し、適宜進行方向の修正をかけて宝を目指す過程が、臨床推論で重要であると考えている。

 

では、仮説検証作業のタイミングの設定に客観的根拠、いわゆるエビデンスが必須ではないという点についてだが、この仮説検証作業の一番の重要な点としては、推論の軸となるものを設定することであり、その軸の妥当性はそこまで重要ではないと私は考えている。

先の例で言うと、1週間後に変化が確認できるということについて、おそらくエビデンスは無いはずだ。

ただ、感覚的にも1週間後に変化が確認できるという推論の軸(仮説)を立てることによって、1週間後に検証作業を行うことによって、その仮説の正当性や問題点との関連性を検討する機会を作ることができる
学習理論でいうところの、教師あり学習みたいなものか。

つまり、自身の臨床推論能力を向上させるという観点において考えると、より確からしい仮説を立てることよりも、客観性が乏しい仮説であっても、仮説設定-検証作業をできるだけ繰り返すことによって、推論能力が鍛えられると考える

 

ちょっと小難しくてわからないという方は、自身の担当する対象者の1週間後がどうなっているかといった簡単な仮説を立てみよう。そして、その根拠を文献からでも自身の経験からでもいいので、ある程度持っておき、実際に1週間後の状態と比較する。

 

そこから後の作業は次回に説明するが、自身の頭の中で完結する話なので、明日からでも試して頂きたい。ハッキリ言って、これだけで臨床推論能力が劇的に改善すると断言できる。

 

 

まとめ

今回は仮説検証のタイミングについて述べた。

学生時代から、根拠は? エビデンスは?みたいな問答を繰り返してきただろうから、ある種感覚的に仮説を立てることに抵抗がある方も多いだろう。

ただ、私の以前のブログを参照して頂ければわかるが、我々のリハビリテーション領域の根拠やエビデンスなんで、自然科学全体から考えると、妥当性の極めて乏しい科学レベルとしては低いものであると言える。

だからといって不要であるとは言わないが、そんな低次元で根拠の有無を考えて足踏みするぐらいなら、一旦仮説を立てて、それを検証する過程において新たな知見を増やしていく方が、臨床推論能力としては確実に向上する。

 

ものは試し。是非とも実施してみてほしい。

 

”こういった思考方法に関する話はわかりにくいとは思うものの、書いてる本人は嫌いじゃないのです”
(´-`).。oO

この記事を書いた人
りゅうぞう

生理学好きのギャンブラーPT
経済と投資について勉強中!!

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