こんにちは、まめたです。
昨今の人材育成において、『自律』や『主体的』といった言葉がキーワードに上がることが多くなっている。時代の移り変わりと共に、自ら考え、行動できる人物が必要となってきていることの現れと思われる。また、理学療法士業界で以前は通じていた「新人は残って勉強するものだ」みたいな雰囲気も、現在は労働基準的に言いにくくなっており、勉強する・しないは個人にゆだねられがちだ。かといって、この業界は医学の進歩に合わせて学び続けることが必要な業界でもあると考える。
前回の『理学療法士の新人教育2』と前々回の『理学療法士と新人教育』にて教育のことに触れたが、当院も教育について悩んでいる一施設である。今回は、『自律する子の育て方 』という本を参考に、子育てという視点から教育について考えたい。
最新の脳研究でわかった! 自律する子の育て方
『自律する子の育て方』
本書の著者である工藤勇一氏は元中学校校長であり、青砥瑞人氏は脳神経科学の研究者である。この2人が教育現場の視点と科学的な視点から教育の在り方について論じている。
子どもに手をかけすぎる大人たち
昨今の大人は子どもに手をかけすぎている。様々な習い事をさせ、教育の機会を与えているが自己決定する機会が失われていると述べている。
それは、大人も同じで、教育システムを整え、そのシステムに人を乗せることが必ずしも成長につながるとは限らない。そこに本人の意志があるかどうかで大きく変わってくる。
自己決定を促す「3つの言葉」
「どうしたの?」
困っている時に、自身の置かれている状態を言語化してもらうための言葉がけであり、メタ認知に必要な自分の内面に意識を向ける訓練にもなる言葉である。何をしても頭ごなしに叱らないことがポイントである。
まず、言葉の整理であるが、本書では『メタ認知』を「自己を俯瞰的に捉え、自己について学ぶ機能」としており、この能力が自律にとって不可欠であると説いている。
さらに、”頭ごなしに叱らない”ことで、『心理的安全性の確保』を目的としている。心理的危険状態になると、①現実に沿った思考やエラー検知が低下、②意識的な注意と思考が低下、③不適切な行動が抑制できなくなる、④感情のコントロールが低下、など様々な機能が低下する。子どもや部下に対して、良くない言動などを是正しようと思い、激しく怒った経験がある方もいらっしゃるかもしれないが、人は激しく怒られれば怒られるほど、その時の言葉は頭に残っていない。とても皮肉な話である。
部下が困っていそうであれば「どうしたの?」と優しく声をかけ、部下の思考が正常に働くよう支援をした上で、自分の置かれている状態を言語化し内省できる機会を作ろう。
「どうしたいの?」
本人の意志を確認するための言葉がけで、自分の置かれた状態を解決するための方法を、頭の中で考えてもらうためのきっかけにする。本人の中で、解決策が決まっていればその自己決定を尊重する。
「私にできることはある?」
問題解決の手助けをする言葉がけで、実際には選択肢を与える形になることが多い。どんな支援を受けるのか、もしくはそもそも手助けを受けないのかを本人に判断してもらう。サポートする意思を表明することで、味方であると認識してもらい心理的安全性にも寄与する。
この上にあげた3つの言葉がけを繰り返すことで、ひたすら自己決定を繰り返す。人が決めたことには不満が出やすいが、自分で決めたことには他人の責任にはできないのである。
理学療法士の職場の応用
管理職:どうしたの?
部下A:担当している患者さんの右膝の痛みがなかなかとれなくて…
管理職:少し、評価内容などを詳しく教えて。
部下A:かくかくしかじか(評価内容を説明)
管理職:これからどうしたいの?
部下A:今日、膝の文献について調べてみようと思います
管理職:わかった。何かできることはある?
部下A:文献を調べてみて、分からなければまた相談しても良いですか?
管理職:もちろん良いよ。あとは、必要そうな文献があったら持っているものを貸せるし、一緒にOJTに入ることもできるから、いつでも相談して。
こんな感じで部下と関われると、部下の自律を促せる気がしてきた。
まとめ
今回、『自律する職員の育て方』と題して書いてきたが、職場における部下がこのように上手くいくことはなかなか難しいことの方が多いと考える。それは、患者さんからお金をいただく以上、失敗を許容しにくい環境であることや、人事考課など他者に評価されているという心理的に安全とは言いにくい環境などが影響していると考える。全てが本書によって上手くいくとは限らないが、人と関わる上で大切な要素の一つと考える。
また、本書には今回書いたこと以外にも興味深い内容が書かれている。子育て世代のお父さん・お母さん、部下や後輩を持つ方々には、是非ご一読いただければ幸いである。
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