こんにちは、まめたです。
お店で食事をしている時や商品を購入している時に、隣でお客さんが店員に対してクレームを言っている様子を見かけたことはあるだろうか?人によってはクレームを受ける側、クレームを言う側、どちらも経験したことがあると思う。
リハビリの場面でももちろんクレームは存在する。今回はそんなクレーム対応について考えていきたい。
クレームの種類
私はクレームには2種類あると考えている。まずはこのどちらかを見極めることが大切だ。
正当なクレーム
文字通り、正当性のあるクレームである。例えば、疾患別リハビリテーション2単位分の金額を請求されたのに、実際は30分しかリハビリを実施していなかった。本来であれば40分以上の実施が求められるため、不利益を被ったとして何らかの請求をされても仕方のない状況である。
不当なクレーム
リハビリ側に落ち度がないクレームである。例えば、『当院の外来リハビリは予約制です』と事前に患者へ説明しており、患者と予約日時を月曜日の15時に決め、予約日時を記載した用紙を渡したにも関わらず、火曜日の9時にやってきて「なぜリハビリができないんだ」と怒り出す。このような例はこちら側に落ち度がないと言っていいだろう。(ただし、いろんな患者背景があるため、その部分については加味する必要がある。この例では、背景は加味しない)
理学療法士へのクレーム内容
理学療法士へのクレーム内容は大きく分けて2つである。(今回は正当なクレームとして捉える)
理学療法士の臨床に対するクレーム
理学療法士が提供する疾患別リハビリテーションの内容が対価に見合っていないことに対するクレームと考える。もう少し細かく言うと、①悪くなった、②変わらない、③良くなっているが期待値を下回っている、ということに分類される。
これらのクレームを防ぐ方法を考えると、『①悪くなった』は理学療法士としてはあってはならないことである。知識・技術を高めてもらうのが重要である。
『②変わらない』も知識・技術を高めてもらうのも重要と考えるが、「痛みが変わらない」と言われた際に、「現在の痛みの要因は①~③まで考えられていて、可能性が高い①と②に対してアプローチをしてみたが、これで変化がないようであれば③に対してリハビリをしてみます。もし、それでも変わらなければ④の可能性があり、これについては理学療法で対応ができないため、医師に相談し原因の精査を再度してもらう必要があると考えています」といった説明がクレーム者に対してなされていれば、『②変わらない』ことに対して大きな問題にはならないであろう(ちなみに症状の原因がこんなに明確になることはなかなかないが、現状がどの過程なのかを伝えることが重要だと考える)。
『③良くなっているが期待値を下回っている』についても知識・技術を高めるのはもちろんであるが、「目標達成が100%とした時に、現状は30%ぐらいです。ただ、経過としては順調で、経験上、1ヶ月後には50%程度まで、3ケ月後には100%までたどり着く予定です」(「ただあくまで経験上なので、人によっては異なります。予後については医師にお聞きください」という言葉はお忘れなく)と説明ができていれば安心もするだろう。ちなみに、相手の期待が高すぎてそのレベルまでは到達しない場合は、医師より予後について伝えてもらう必要がある(そんなことをしてくれる医師はあまりいない印象であるが)。
理学療法士の接遇に対するクレーム
よくあるのは「友達かっ」と突っ込まれそうな対応をしているスタッフである。これについては、議論が分かれるかもしれないが、重要なのは理学療法士と患者の関係性に加え、それが周囲(家族や他の病院スタッフなど)から見て違和感がないか?ということである。クレームが上がりやすいスタッフは、どの患者に対しても分け隔てなく友達のように接しているため、周囲から見ても明らかに違和感がある。クレームが上がらないスタッフは、患者をみて合わせたり、タイミングをみて友達のように接していることが多い。つまり、患者の雰囲気を感じとりながら、自分と患者との関係性を客観的に捉えることができる能力が必要である。私の場合は自分自身それが得意とは全く思っていないため、基本は敬語で接している。
また、外来リハビリでよくあるのは、待ち時間に対するクレームである。当施設では予約制をとっているが、込み合うとどうしてもリハビリの時間が予定より遅れてしまうことがある。そのような時に、予定の介入時間の前に、予定の時間より遅れることに対する謝罪をすること、患者の予定が遅れても大丈夫か確認すること、何分程度遅れる見込みであること、を伝えることが重要と考える。もちろん、初診でリハビリ開始をする前に込み合っている際に予定時間より遅れてしまう可能性があることを伝えておくことや、遅れないようスケジュールにゆとりを持たせておくのも大切であると考える。
リハビリにおけるクレームへの対応
相手の話を聞く
当たり前ではあるが、クレームを言う人は少なくとも何らかの思いを訴えたい人である。そのため、まずは相手の訴えを聞くことが第一優先である。特に感情的になっている人の話を遮ることはあまりお勧めしない。火に油を注ぐことになるだけである。そして、相手の感情について共感を示すのも大切である。「そのような不快な思いをされたのですね」「そのようなお気持ちにさせてしまい大変申し訳ありませんでした」といったように、相手の言葉を復唱したり、相手の言葉に共感を示したりすることが大切だ。
しかし、言ってはいけない言葉もある。それは『相手のクレームについて事実確認をしないまま謝罪をする』というとこである。事実を確認しないまま謝罪をしてしまうと、もし不当なクレームだった際に「あの時謝罪してそちらの非を認めたじゃないか」と言われてしまい、話がこじれてしまうからである。
事実確認をする
まずは、相手の言い分を聞くことが鉄則である。
患者さんからの話は「昨日、リハビリ終わった後に帰ったら右足が痛かった」というような訴えがあったとする。しかし、これでは、何が原因で足が痛かったが分からない。そのため、『いつ』『どこで』『誰が』『どのように』といったような言葉で、相手の話を確認し整理することが必要である。『いつ=昨日』、『どこで=リハビリ室で』、『誰が=担当PTが』、『どのように=ダイレクトストレッチをした時に』というように整理していくと、患者のさんの話が「昨日、リハビリ室で担当PTがダイレクトストレッチをした時に右足に痛みがみられた。帰っても足の痛みが続いている。」というように、事実が整理できると考える。
次に大事なのが、その場で返答しないことである。
その場で返答しない理由は、患者さんからの話だけを聞くのではなく、担当PTからその時の状況の事実確認をするためである。また、当日のカルテ記載なども確認すると尚良いと考える。担当PTにも話を聞くことで、例えば、「リハビリ室に来る前に家で転倒し右足をうったと聞きました。そのため、右足は触っていません」という返答があるかもしれない。今回の例は極端かもしれないが、患者さんと担当PT両方に話を聞くことで正確な情報が得られ、適切な判断ができると考える。
ただし、明らかにこちらに非があり、その場の謝罪で済みそうな内容の場合はその場で済ませる。例えば、患者がスタッフを呼んでいるのに、スタッフが大きな声で仕事と関係のない話をしていて呼びかけに応じなかった、そして自分もその現場を目撃していたというような時は、その場で謝罪をし、以後気を付けるよう徹底しますという対応になるだろう。
いったん距離と時間を空ける
当日の返答は避けた方が良い。そのため、「改めてご連絡させていただきます」はパワーワードである。
これにより、①クレーム者さんと、距離と時間を空けることができる、②その時に返答をしなくて良い、という素晴らしい一言である。距離と時間を空けることで感情的になりがちなクレーム者の気持ちも落ち着くであろう。そして、改めてご連絡させていただく間に必死で情報を集め、事実を整理し、上司に相談し、対応を検討・決定するのである。
ちなみに、「上司と話をさせてほしい」や「医師と話をさせてほしい」という要望が聞かれることがある。これは基本的には受けない。「あいにく上司が不在でして」や「今、対応が難しくて」などと言ってごまかす。上司が出るのは、少なくとも「改めてご連絡させていただいた」後である。
信頼関係
これは私の持論であるが、なんだかんだいって患者との信頼関係を作っておくことはクレームの抑制につながると感じる。人間は感情的な生き物である。理学療法の現場におけるクレームの大半はコミュニケーションエラーによるものである。説明と同意をとることや、臨床中の世間話なども含め、常日頃から患者とコミュニケーションをとり、信頼関係を築いておくことが多くのクレームを防ぐことができると考える。誤解を恐れずに言えば、『この人の失敗なら仕方ないか』と思ってもらえるかどうかである(失敗しないに越したことがないのは言うまでもない)。
まとめ
仕事を行っていく上でクレームは付きものである。クレームを減らすためには、臨床の知識・技術を高めることはもちろん、コミュニケーションや信頼関係もクレームの有無に関わってくる。しかし、忘れてはいけないのはいただいたクレームに対して真摯に向き合い、対応していく姿勢を持たなければならないということである。「またクレームが出た。めんどくさい。」と捉えてしまっては成長するチャンスはない。
医療水準が上がり、患者に入る情報も増えている最近では、以前と比べると患者の期待に応えることが難しくなってきている。その期待値を上回るためには自分やスタッフが成長していくことが必要である。
『維持は後退である』と誰かが言っていた。私は維持するだけでも精一杯であるが、こんなことを偉そうに書いている手前、ちょっと勉強しようと思った次第だ。よし、なんなら患者さんのこともいつもより褒めてみよう。
この記事が読んでくれた方の何かのきっかけになれば幸いだ。
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