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読みもの➂「白衣の天使との密約」

全理学療法士向け
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理学療法士が看護師とうまくやるコツ

病院という組織において、看護師は「生活」を守り、理学療法士は「変化」を促す。

この構造的なズレが往々にして摩擦を生む。

まず、あなたたちが大学や専門学校で教わった「チーム医療」という美しい言葉を一度ゴミ箱に捨ててほしい。あんなものは厚労省や学会がパンフレットに載せるためのファンタジーだ。

現実の病棟は理屈ではなく「生活」で回っている。

リハビリ屋が「もっと動かしてください」と理想を語る一方で、看護師は「転倒のリスクと業務の山」に追われている。

この断絶を埋め彼女たちの懐に潜り込むには、いくつかの「儀法」が必要だ。

彼女たちの「聖域」

病棟のナースステーションは彼女たちの戦場であり「聖域」だ。

そこへきて、忙しそうに記録を書いている看護師の背中に向かって「〇〇さん、今からリハですけど体調変わりないですか?」などとぶっきらぼうに話しかける。これは自殺行為だ。

まずは「お忙しいところ失礼します」という定型句を、心からの懺悔のように唱えることだ。

そして、彼女たちの仕事の手が止まる一瞬の隙を見逃さず要件を簡潔に低姿勢で伝える。

「30秒だけ〇〇さんの移乗について相談させてください。結論から言うと介助が楽になる方法を見つけました」

相手の邪魔にならないサイズの内容を用意しつつ、「気に入らなければどうぞ殺してください」いう態度を存分に示す。

理学療法士が「先生」と呼ばれて悦に入っているうちは二流だ。

彼女たちの「高度なマルチタスクを支える協力者」としてのスタンスを崩してはならない。

「手間」を減らし、「成果」を共有する

看護師が理学療法士を嫌う最大の理由は、「自分たちの仕事を増やすから」だ。

「リハビリで歩けるようになったので、トイレまで歩かせてください」 これほど無責任な言葉はない。

看護師にしてみれば、夜勤の忙しい時間に転ばれるリスクが増えるだけだ。

うまくやる奴はこう言う。

「夜間のトイレ介助が大変だと伺いました。今日から一人で手すりを持って立てる練習を重点的にやろうと思います。安定したらまず日中の見守りからお願いできないでしょうか?」

彼女たちの「負担(コスト)」を理解し、それを軽減するための「リハビリ(投資)」を提案する。このビジネスライクな視点こそが信頼を生む。

「リスク」という名の共通言語

看護師が最も恐れ忌み嫌うものは何か。

それは「事故」だ。

転倒、転落、点滴の自己抜去。これらはすべて看護師の「始末書」となり、彼女たちの貴重な休息時間を奪いキャリアに傷をつける。

理学療法士が「この患者さんは歩行が自立しました」と宣言する時、看護師の脳内には「夜中に一人でトイレに行こうとして転ぶ姿」が再生されている。

ここに両者の致命的な対立がある。

理学療法士は「できること」を増やしたい。看護師は「事故」を減らしたい。

この対立を解消するコツは、「リハビリ目標」を「看護師のリスク管理」の言葉に翻訳して伝えることだ。

「トイレの練習始めていきたいので病棟でもお願いします」ではなく、「この患者さんは右側にふらつきやすいので、ポータブルトイレは左側に置く方がよいと思います。看護師さんたちの介助負担も事故のリスクも減ると思います」と。

彼女たちの不安を先回りして言語化し、その対策を具体的に提示する。

これができる理学療法士を看護師は手放さない。

なぜなら自分たちの安全を守ってくれる「盾」になるからだ。

「情報の通貨」を交換する

看護師は情報の宝庫だ。

医者には見せない患者の素顔、家族の不穏な動き、深夜の不眠。これらはリハビリの進捗を左右する一級のデータだ。

しかし情報はタダでは手に入らない。

「さっきのリハビリ中、〇〇さんが『看護師のAさんが親身になって話を聞いてくれて本当に嬉しかった』って感謝していました」

そんな些細な、しかし彼女たちの自尊心をくすぐる「情報の通貨」を投げ渡す。

次からは君が聞かずとも患者のバイタル変化やADLの不具合を向こうから教えてくれるようになる。

褒め言葉の「横流し」は最もコストのかからない、しかし最もリターンの大きい投資である。

「清潔感」という名の最低限のマナー

身も蓋もないことを言わせてもらえば、看護師は理学療法士の「清潔感」を想像以上にシビアに見ている。

寝癖のついた頭、薄汚れたケーシー、汚く伸びた爪、そして「俺は職人だ」と言わんばかりの横柄な態度。

これらはすべて彼女たちのフィルターで「不潔・不誠実」と分類される。

リハビリの技術を磨く暇があるなら、まずはケーシーを洗濯に出し、爪を切れ。

女性が多い職場において、生理的な「安心感」を提供できない人間は議論のテーブルにすらつかせてもらえない。

女性がマジョリティを占める職場において生理的な嫌悪感を持たれたら、どんな高度な理論も耳には届かないのだ。

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「共生」の先にあるもの

看護師に気に入られることは、自分が楽をするためではない。

理学療法士が立てたリハビリ計画が24時間の療養生活の中で「継続」されるためだ。

リハビリ室の1時間なんて一日のわずか4%に過ぎない。残りの96%を支配する看護師たちを味方につけて、初めて理学療法は「完成」する。

「あのPT、インテリぶってて鼻につくけど、現場のことはよく分かってる。」

そう言われるようになったら理学療法士として一人前だ。

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