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人事考課で役立つ”目標設定から実行に関わるカイゼン活動8つのステップ”

全理学療法士向け
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新年度に入って半月が過ぎた。今年度も人事考課にて、人事面談や目標管理シートなるもので、今年度の目標や各々の取り組みについて、上司と相談する機会を設ける施設も多いだろう。

前回のブログでは、人事考課における目標管理シートの書き方として具体的な目標設定の方法について述べた。気になる方は、チェックして頂きたい。

さて今回は、人事考課シリーズの第二弾として、実際に目標設定を行ってから、その目標に沿って何らかの取り組みを実行するまでの方法について述べていきたいと考えている。

それを説明するにあたり、今回は カイゼン活動 のフレームワークを用いてみることにした。

“カイゼン活動”なんて聞いたことのない方も多いかもしれないが、フレームワーク自体は理解しやすい内容のため、興味があればご一読いただきたい。

それでは始めていこう。

 

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カイゼン活動とは

そもそもカイゼンについて説明していこう。

カイゼンとは、日本語で「改善」を意味し、企業や組織において持続的な改善を目指すアプローチである。

始まりは、世界のトヨタ自動車であり、元々は主に製造業の現場でおこなわれる、生産現場の作業効率や安全性の確保を見直す活動であった。

この手法が、海外にも波及し、今や KAIZEN として製造業に留まらず、物流やサービス業、そして我々のテリトリーである医療機関などにおいて広く用いられている。(病院においてはQC活動とも言われる)

 

また、カイゼン活動のプロセスは個人の業務改善にも応用することができるものであるため、今回はカイゼン活動のプロセスを個人の業務改善に適用する方法について解説していこうと思う。

 

 

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カイゼン活動の8つのプロセス

一般的なカイゼン活動は以下の8つのプロセスで進めていく。

① 問題点の把握
② テーマ選定
③ 現状の把握と目標設定
④ 要因解析
⑤ 対策の立案と実行
⑥ 効果判定
⑦ 標準化と管理の定着
⑧ 振り返り

このプロセスを下図のようにして循環させることでカイゼン活動を進めていく構図となっている。

 

それでは、一つずつ簡単に説明していこう。

 

 

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① 問題点の把握

製造業と同様に医療においても、業務の問題点や無駄を明らかにすることは、安全面や効率性の観点からも重要となる。具体的には日々の業務で発生する課題や、業務プロセスの効率が悪いと感じる部分を特定していく必要がある。

問題点と聞くと仰々しく考えてしまいがちだが、どんな内容でも構わない。

例えば、「代診の申し送り業務に時間がかかる」とか、「病棟と上手く連絡を取ることができない」なども立派な問題点である。

このように、問題点に関してはどのような内容でも構わないが、”カイゼン活動”として昇華させるためには、以下の点を意識してほしい。

問題点の記述は、何がどのように悪いのかがわかるように簡潔に表現する。

・問題点は抽象的にならないようにする。

・対策をいれない。

例えば、「代診の申し送りの方法が複雑で、業務時間内に終わらない」といった問題点を挙げたとする。
一見、特に問題ない内容に思うが、この問題点には「代診の申し送り方法が複雑」という点と「ご業務時間内に終わらない」という2つの問題点が存在する。

そしてこれには、暗に「業務時間内に終わらない」の問題の原因が「代診の申し送り方法が複雑」であることを示唆している。

後の要因分析にも繋がるものだが、この段階で問題点の原因を考えてしまっていると、代診の申し送り方法が複雑であるということとは別の原因の可能性を無意識に除去してしまうことに繋がる

 

という訳で、ここではよりシンプルに「代診の申し送りが業務時間内に終わらない」という問題点にしておこう。

実際のカイゼン活動では、できるだけ複数の問題点を挙げて、そこから取り組みとして行うテーマを厳選することが望まれるので、普段から問題意識を持って業務に従事することが望まれる。

 

 

② テーマ選定

問題点が明らかになったら、取り組みのテーマを選定する。このテーマの選定とは、達成すべき目標みたいな内容となる。少しややこしいが、後述する”目標設定”とは少し異なる。

前述の例で言うと、「代診の申し送りを業務時間内に終わらせる」みたいなことだ。

 

実際にテーマを選定する際は、優先度の高い課題や、効果が大きく見込める課題を選ぶと効率的である。また、病院やクリニックの目標や戦略に沿ったテーマが選ばれることが望ましい。これについては、前回の目標管理シートの内容にも通ずる。

例えば、患者の満足度向上を目指す場合、待ち時間短縮や対応スタッフのコミュニケーション能力向上などがテーマとして考えられる。一方で、医療事故の削減を目指す場合においては、診療プロセスの見直しや、チーム間の情報共有の改善が重要なテーマとなるだろう。

また、テーマ選定においても、可能であれば上司とも相談の上で検討することが望ましい。
実際のカイゼン活動においても、関係者全員が関与し、意見やアイデアを共有することが重要であるとされる。スタッフ間のコミュニケーションを活発にし、共通の目標に向かって取り組むことで、より効果的な改善活動が実現できると考えられているからである。

 

 

③ 現状の把握と目標設定

改善テーマが決まったら、現状の業務プロセスを把握し、目標を設定する。

現状の把握には、データ収集や業務フローの整理が役立つ。例えば、診療実績、医療事故発生率などの情報を収集し、現状を詳細に分析することが重要である。

先の例で言うと、実際に「代診業務を業務時間内に終了できていない数や割合、業務時間を超過した時間など測定する」こととなる。

このプロセスにより、前述した問題点の詳細について確認することができる。(場合によっては、問題と考えていたものが単なる個人の思い込みであり、そこまで問題ない可能性も…)

そして、現状の把握が終われば目標設定に移る。

 

目標設定では、具体的かつ達成可能な目標を立てることが重要であり、前回のブログでも用いたSMARTな目標(下記参照)を心がける。

Specific :具体的な(誰がみても理解できるもの)
Measurable
:測定可能な(達成度を測れるもの)
Achivable
:達成可能(実現できる現実的な目標である)
Relavant
:関連性のある(組織の理念や目標に関連する)
Time-bound:時間制約がある(期限が設定されている)

これにより、改善活動の進捗が分かりやすくなる。例えば、「1年間でインシデントを20%減らす」など、具体的な数値目標を設定することが効果的だ。

先の例で言うと、「代診で業務時間内に終わらない数を半分にする」といったところか。

ここで重要な点としては、目標を高くしすぎないことだ。
少しでも問題が解決するだけで、取り組んだ価値が十分あると頭に入れておこう。

あと、そもそも業務時間内に終わらせる必要があるかどうかについても考えておく必要がある。
その問題自体が問題視されていないのであれば元も子もなくなる。ゆえにこれに関しても、管理職と協議しつつ進めることが望まれる。

また、目標設定を行う際には、関係スタッフ全員が納得できる形で目標を共有し、コミットメントを確認することが大切である。これにより、関係スタッフが一致団結して改善活動に取り組むことが可能となり、より高い成果を期待できる。

 

 

④ 要因解析

改善テーマと目標が設定されたら、問題の根本原因を特定するために要因解析を行う。医療職においても、問題の根本原因を理解することが、効果的な改善策を見つけるために重要である。

要因解析の方法はいくつかあり、その中でも「5つのなぜ(5 Whys)」や「フィッシュボーン・ダイアグラム」がよく使われる。

5つのなぜ分析では、問題が発生した理由に対して繰り返し「なぜ?」と問いかけることで、根本原因を見つけ出す。フィッシュボーン・ダイアグラムでは、問題の要因を構造的に整理し、関連性を明確にする。

これに関しては、ブレインストーミング方式にて、問題の要因について考えられるだけ考えることが重要である。そして、それらと問題点との関連性を整理し、介入すべき課題を抽出していく。プロセスは異なるが、理学療法評価と似たようなものなので、そこまで難しくはないと思われる。

例として「代診での報告内容が画一化されていない」という要因を挙げておく。

要因解析を通じて、根本となる原因を特定したら、次のステップである対策の立案と実行に進む。

 

 

⑤ 対策の立案と実行

根本原因が特定されたら、対策の立案と実行に移る。この段階では、問題解決に向けた具体的なアクションプランを策定し、それを実行する。

アクションプランとは”行動計画”のことであり、目標達成までのプロセスを明らかにして、取り組みの到達度を把握することができるという効果が見込める。

内容としては、具体的な行動(対策)と時期を明確にすることであり、ガントチャートを作成すると視覚的にも把握しやすくなるのでオススメである。

先の例で言うと、「代診の報告内容を画一化するために、簡便に使用できる代診表を作成する」という対策を挙げる。前回のブログでいうと、目標達成に向けた行動がこれにあたる。

 

 

⑥ 効果判定

改善策が実行された後、その効果を判定することが重要だ。

基本的には”現状の把握”で行った内容と同様の評価を行い、テーマの選定で設定した”改善テーマ”と照合することで問題ない。

効果判定の結果に基づいて、改善策が十分な効果をもたらしたかどうかを検証する。
効果が確認できた場合は、その改善策を標準化し業務プロセスに組み込む。一方で、効果が不十分な場合は、再度要因解析や対策立案のプロセスに戻り、改善活動を続ける。

このように、効果判定を通じて改善活動の成果を確認し、継続的な改善を目指すことが重要である。

例としては、「代診で業務時間内に終わらない数を測定する」となる。現状把握と同じだ。

 

 

⑦ 標準化と管理の定着

効果判定で改善策の成果が確認できた場合、その手法を標準化し、組織全体で共有・適用するプロセスに移る
医療職においても、標準化された業務プロセスや手順が、品質の維持・向上や医療事故の削減に役立つ。

先の例でいえば、「代診表の運用方法を策定する。

標準化されたプロセスを維持・管理するために、定期的な監視評価が必要となる。
この段階では、改善された業務プロセスが定着し、新たな問題が発生しないように注意を払う。また、継続的な改善活動が行われるよう、組織全体で改善意識を高める取り組みが求められる。

 

 

⑧ 振り返り

カイゼン活動が一通り終了したら、振り返りを行い、学びや気づきを共有することが大切である。

振り返りでは、達成した成果や効果のほか、カイゼン活動の過程で遭遇した困難や、次回のカイゼン活動で活かせるアイデアを関連スタッフと共有する。このような情報交換を通じて、組織全体の知識や経験が向上し、今後のカイゼン活動がより効果的に進められるようになる。

 

 

筆者からひとこと

さて、以上がカイゼン活動の8つのプロセスの説明になる。

これをベースに自身が行いたい業務について構造化すると、他者からは明らかに”できる”人間に見られるだろう。

 

昨今、理学療法士としてただ単位を取って、お金を稼いで、副業もやって、ライフワークバランスを保って、といった形で本業に対してドライに関わる人が多くなっているように思う。

その考え方に関しては否定はしないが、そもそもして給料を貰えるのは、自身のモノやサービスが他者の価値に繋がることで始めて対価を得られることが原則と考えている。

であれば、価値=対価に必ずしも繋がるわけではないが、自身のモノやサービスの質を向上させて他者により高い価値を提供できるように研鑽しておくことは、自身の将来(給料を含む)を考える上でも重要な投資となると考える。

ゆえに、このような手法を用いて組織の業務改善を進めることは、結果として自身のサービスの質を向上させることにも繋がるため、組織の垣根を越えて自身の価値を提供できるようになる。

正直、手間のかかる作業ではあるが、どうせ人事考課で行わないといけない事なのであれば、少しでも他人とは一線を画す内容にしてはどうだろうか?30代のおっさん理学療法士として、声を大にしておススメする。

 

ちなみに、今回のカイゼン活動(QC活動)を深く理解したいのであれば、以下の書籍をオススメする。

良ければ参考にしてほしい。


QCサークル活動の基本と進め方

 


課題達成型QCストーリーの基本と活用

 

 

まとめ

さて、前回のブログに引き続き、人事考課シリーズの第二弾としての内容であったが、いかがだっただろうか。

人事考課については、どのように対応したら良いか、特に若手の人間は悩むだろう。そんな方々にこのブログが参考になれば幸いである。

新年度になったため、心機一転頑張るのもいいタイミングだ。

是非とも組織内にて一目置かれる存在になってもらいたい。ハッキリ言って、その方が仕事が楽しくなるし、やりがいを感じるようになる。

 

「どうせ頑張っても給料一緒だし」「仕事はお金貰うだけだから適当に楽しとこう」

 

こんなマインドもわからなくもないが、皆さんの人生において仕事に関わる時間の割合を考えてもらうと、8時間労働ならば、1日の1/3の時間を仕事に費やすことになる。その大量の時間を金稼ぎのみに充てるのは勿体ない

 

仕事の中で自身のスキルアップを図りつつ、自身の市場価値を向上させる

 

自身への投資と思って、わずかなことからでも新しいことにチャレンジしよう。

 

それでは今回はこの辺で!

 

 

”とはいえ結局直属の上司の能力にも影響を受けるから、ダメ上司に当たったなら転職するのも要検討だ”
(´-`).。oO

この記事を書いた人
りゅうぞう

生理学好きのギャンブラーPT
経済と投資について勉強中!!

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