こんにちは、まめたです。
私は職場で中間管理職の役割を担っており、その役割の中には人事考課というものがある。今回はそんな人事考課について、当職場の現状も踏まえ、普段私が感じていることを記載していく。
人事考課とは
まず、人事考課についてWikipediaでは以下のように定義されている。
人事評価(じんじひょうか)または人事考課とは従業員の業務の遂行度、業績、能力を評価し、賃金や昇進等の人事施策に反映させる仕組みのこと[1]。6カ月や1年など定期的にかつ継続的に実施される[1]。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E4%BA%8B%E8%A9%95%E4%BE%A1
当職場でも同様に、年に2回人事考課を行い、その評価結果で毎月の給与や賞与の支給額が変化する。お金が関わることとあって、管理職の仕事の中でもなかなかシビアな項目である。
人事考課の内容
当職場の人事考課の内容を一例として紹介する。大きく分けて2つの得点から構成される。
1つ目は、大項目が5項目あり、その大項目それぞれに対し同じ系統の小項目が5つある。評価は5段階評価で0~4点であり、全部で100点満点となっている。
大項目については以下の通りである。
- 患者:組織の理念を理解した行動や、患者視点での行動ができているか、など
- 革新:業務課題に対して改善に取り組めているか、など
- 協調:チームの一員として行動できているか、など
- 挑戦:自身の成長のためにチャレンジできているか、など
- コミュニケーション:適切な人間関係が築けているか、など
2つ目は、半年ごとに自身で目標を設定し、その目標の達成度合いに対して最大で30点の点数が加算される。例えば、「認定理学療法士の取得」や、「業務課題の改善実施1件」、「1日平均18単位」など目標は様々である。ちなみに、認定理学療法士の取得をした場合は、上記の大項目の『4.挑戦』という項目に高得点が付きやすくなる。
人事考課の客観性
人事考課の項目の客観性
『人事考課の内容』であげた大項目を見てもらうと、その職場で求められる人材像がみえてくる。これらの項目に沿って自身を振り返り、足りないところは改善し、足りているところも更に成長する、という視点でこの人事考課を利用することで、その職場で求められる人材に近付くことができる。
しかし、その一方で、項目の中に臨床能力に対する評価というものがほぼみられない。理学療法士という仕事は患者さんを良くすることが目的である。そのため、半分ぐらいは臨床能力という観点の項目があってもいいのではないかと感じている。
確かに、患者さんへの理学療法提供による効果の判定は難しい。例えば、FIMの改善にしても、担当している患者さんはこの世の中で1人だけであり、同じ病気であっても年齢も違えば背景も違う。そのため、担当している患者が違う時点でFIMの改善度合いに差が出るのは仕方ないのである。そう考えると、何を持って理学療法士の臨床能力を比較するのかという課題が出てくる。
当職場では、目標(30点)の中に、単位数を各スタッフの人事考課に反映させたり、目標の内容にFIMの改善率を上げ、当職場の平均と比較するなどし、なんとか臨床能力を人事考課に反映できないか試行錯誤中である。
理学療法の客観性を考えると、理学療法士全体の課題のような気もする。
人事考課の採点の客観性
『人事考課の内容』であげた大項目を細分化した小項目25項目に対して点数を付けていくのであるが、0~4点の判断基準が難しい。はっきり言ってしまえば本来客観的に評価しなければならないが、どうしても主観的要素が入りやすくなってしまうのである。例えば、『挑戦』の小項目である「自己研鑽のため研修会へ参加している」について採点するとする。ここで疑問に上がるのが、「6ヶ月の期間の中で何回研修を受講すれば4点なのか?」というようなことである。これをできるだけ客観的にするために、当職場では管理職同士で〇~〇回は〇点にすることを予め共通認識として合わせている。しかし、更に言うと「2時間の研修を5回受けることと、1日ある研修を5回受けることは同じなのか?」という疑問も上がってくる。
これは、目標達成度合いに応じて点数をつける方にも言えることであり、「認定理学療法士の取得」と「業務課題の改善実施1件」では、どちらも成果が出た際には両方30点をつけるのか?、難易度的にはどちらの方が高いのか?など、なかなか判断の付きにくいところである。結局のところある程度の共通認識は持つが、最終的には主観にならざるを得ないのが当職場の現状なのである。
人事考課での評価をあげるには?
人事考課を把握しそれに即した行動を行う
さて、そんな客観性において疑問の多い人事考課ではあったとしても、職場がそれを採用しているのであれば「郷に入れば郷に従え」である。まずは、ご自身の職場の人事考課がどのような仕組みで行われているかを知ることが大切である。
当職場を例にあげると、『患者』では、常に患者や病院視点での言動が大切であり、挨拶などの接遇面や臨床時の患者対応などが丁寧・親切に行われているかを判断されている。『革新』では、業務における課題を常に意識し、その改善のために尽力しているかがみられている。『協調』では、スタッフ間やその他職種も含めた職員と連携し、何かあったとしても波風が立たないように上手く折衝ができているかが重要である。『挑戦』では、自身の成長のために新たに何か資格をとったり、新たな業務に積極的に取り組んだりする姿勢が評価される。『コミュニケーション』では、報告・連絡・相談ができているか、論理的に説明ができるているか、相手の話の要点を的確に掴むことができるか、といった視点で評価される。
更に、目標を自身であげ、達成に向けて努力していくということも点数に反映される仕組みとなっている。そのため、そちらにも力を入れて取り組む必要がある。ここの点数の良し悪しは評価結果に大きく響きやすい。
つまり、人事考課の採点項目を把握し、それを意識した言動を行うことで点数のアップにつながるのである。あたり前ではあるが、国語・算数・理科・社会のテストのうち、国語と算数の点数が成績に反映されるというのに、理科と社会を一生懸命頑張っても成績は上がらないのと一緒である。
マイナスをなくす
人事考課の採点をしている時、「ここさえ良くなればいいのにな」と思うことがある。仮に、自身の成長のために積極的に学習し、後輩指導も行っており、業務課題の改善に対する姿勢も素晴らしいAさんがいるとしよう。しかし、その人は言い方がきつく聞こえてしまう時があり、それによりスタッフから良い印象を受けていなかったり、患者さんとの信頼関係を気付けていないケースがあったとする。このような場合、『コミュニケーション』の項目もそうであるが、『協調』や『患者』といった項目にも良い評価が付きにくくなってしまう。一つの短所が全体を悪い方向に引っ張ってしまうのである。人事考課では凸凹が少ない人が評価されやすい傾向にあるため、長所を持ちつつも苦手なところを改善していくことが重要である。
上司に事実を把握してもらう
私は人事考課においてできるだけ正当な評価をしたいと思っている。そのため、そのスタッフの良かったことや良くなかったことをメモしている。それは、事実を適正に評価するためである。9月に人事考課の採点をするとした時に、同じ事実があったとしても、直近の8月にあった出来事の印象が強くなりすぎて、4月の印象が薄くなりやすい傾向にある。そのため、事実を記載することでよりその事実を正当に評価できると考える。
また、せっかく良い行動をとったとしても上司が気付いていないことがある。もちろん、職場での姿をみようと努力はしているつもりではあるが、全てを捉えるのは難しい。そのため、もし自身が良い行動をとった時、上司が把握していなさそうな場合は「以前少し課題にあがっていた○○ですが、○○できるよう改善してみました。良ければ確認してもらってもいいですか?」というようにさりげなくアピールするのも大事である(あくまで報・連・相として)。上司も人間である。気付かれていないことは点数に反映されにくい。
まとめ
今回、人事考課について書いたが、理学療法における人事考課は、その人の仕事の全てを網羅できるものではないし、その人自身を評価するものでもない。そして、それを採点するのは人であるため、十分評価できていないことも可能性としてある。評価者は人事考課について勉強し、公正に評価しようとしている(そう願いたい)ことを理解していただきたいが、あくまで不十分なツールであることも認識していただきたい。そして、その人を評価するためではなく、成長のためのツールとして使用することも目的であることを知っていただきたい。フィードバックで更に良くしたいところ、改善したいところ、などを整理し、次の人事考課までに修正していく。そんな自己の成長ツールとしても活用してみてはどうだろうか?それが評価結果に表れ、仕事の信頼とお金に反映されればこれ以上ないツールとなるであろう。
※人事考課における目標シートの書き方についての記事はこちら
療法士向け 人事考課における目標管理シートの書き方(りゅうぞう)
※管理職の方向け、人事考課の「運用」についての記事はこちら
理学療法士の人事考課制度を適切に運用するために気をつけること(なめろう)
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