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理学療法士と物品交渉

管理職向け
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こんにちは、まめたです。

職場で新しい物品を購入しようとする時に、なかなか承認されないことはないだろうか?「せっかく患者さんにとって良い提案をしているのに、なぜ病院や上司は承認してくれないのだろうか」などと憤ったりすることはないだろうか?今回は、そんな物品購入の際に必要な交渉について考える。

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病院の目的

例えば、100万円の電気治療機器を購入したいと考えているとする。「患者さんにとって良い提案だから、もちろん病院は承認してくれるだろう」と安易に考えていないだろうか?見る視点を間違えるとこのような発想に陥りがちである。

そもそも、病院とは会社である。会社の目的は存続することである。存続することで初めて患者さんへの治療が行える。存続するためには、利益を出す必要がある。利益を出さなければ従業員の給料を支払えないため、会社は潰れてしまう。(このあたりのことについてもう少し知りたい方は卵屋の『「患者さんのため」が絶対ではない理由(仕事のバランス理論)』を参照いただきたい)

そのため、例にあげた電気治療機器を購入したいのであれば、病院にとっていかに利益になるかということを示す必要がある。

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物品の優先順位

病院にとって物品を購入するにあたっての優先順位はもちろんある。全て購入できるに越したことはないがそれはおそらく不可能であろう。ちなみに、物品といえども多種多様であるため、今回は『リハビリテーションに必要な物品』という枠組みで考えさせてもらう。

それでは、優先順位を以下にあげる。

1.必要不可欠な物品

2.利益が見込める物品

3.病院にとってなんらかのメリットがある物品

1.必要不可欠な物品

例えば、運動器疾患別リハビリテーションⅠを算定するための施設基準に該当するような平行棒などは、そもそもなければならないものである。そのため、リハビリテーションを実施する上では必要不可欠なものであるため、病院としても購入しないという選択肢はないはずである。

例に出した電気治療機器については、外来リハビリを実施している施設で『消炎鎮痛等処置』を算定している場合はあっても良いが絶対に必要ではないのである。

2.利益が見込める物品

例えば、電気治療機器の場合、外来リハビリにて『消炎鎮痛等処置』を算定していれば、1患者につき、1日あたり35点が算定できる。毎日患者が40名来院するとし、営業日数が毎月20日とした場合の1か月の売り上げはいくらになるであろうか。

350円×40名/日×20日=28万円 である。

しかし、ここで忘れてはいけないのは人件費などのランニングコストである。今回は、分かりやすくするために、大きくかかる人件費のみ(時給のみで社会保険等は考慮しない)で計算する。時給900円のパートさん1名が毎日8時間勤務し、患者さんへの対応をおこなったとする。(ちなみに言うまでもないかもしれないが、対応は医師の指示の下である)

900円×8時間/日×20日=14.4万円 である。

この人件費を考慮した毎月の収支は、

月の売り上げ28万円ー人件費14.4万円=収支13.6万円

つまり、毎月13.6万円の黒字である。

さらに、電気治療機器の購入費100万円がどれくらいの期間で返せるのかを下の図に示す。

上記の数値が示す通り、購入後8月には電気治療機器の購入費分の利益が出るため、8月以降は全て利益となる。ちなみに、この電気治療機器の耐用年数が5年とした場合、5年間の稼働した際の利益は700万円を超える。

このように病院にとって利益が出ることを数値で示せば、交渉がより円滑に進むだろう。

3.病院にとってなんらかのメリットがある物品

病院にとってなんらかのメリットがあるというのは抽象的であるため、以下に例をあげる。

例えば、その物品自体が診療報酬に該当するわけではないため利益とはならないが、患者さんへの治療効果が高く、病院のリハビリテーションの評判が上がることにより、集客効果が見込め、結果としてリハビリテーション部の収益増加につながるという場合は、病院にとってなんらかのメリットがあると考える。

また、内部顧客の視点で考えると、例えば重度介助の患者の移乗により、スタッフの腰痛など健康をおびやかす労働災害が発生する可能性があり、最悪離職にも繋がりかねない。そのような場合にリフトを導入することでスタッフの健康被害が予防できるため、内部顧客の満足度は上がると考える。

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その他

その他にも考慮すべき点として、物品の金額があげられる。皆さんのご想像通り、金額の安い物品の方が病院からの許可が下りやすい。支出をできるだけ安く抑えたいのは経営者としては当然である。

また、その物品の至急性も購入を判断する材料になる。例えば、今まで使用していた電気治療機器の耐用年数が過ぎ、壊れてしまったとする。修理費の見積もりを確認しても修理するメリットが少ないと判断。そのような場合、新しい電気治療機器の購入をしなければ、今までそれを使用していた患者さんへ不利益が生じる。そのような場合はある程度の金額であっても至急性が高いため、購入の許可が下りやすいと考える。

まとめ

以上のように物品の購入にも優先順位がある。もちろん全てがこれにあてはまる訳ではなく、病院の経営者の判断が優先されるのは間違いないだろう。『その他』にも記載したが、物品の金額や至急性においても判断材料となり得る内容である。

物品購入の交渉において大切なことは、購入の有無を判断する人が何を判断基準としているかを理解することである。そして、その物品が病院にどのようなメリットがあるかをできるだけ数字で示すことで説得力が生まれる。もしかすると、数字で示してみると以外となくてもいい物品かもと思うこともあるかもしれない。

今回の内容が、皆さんの物品購入の際の交渉に少しでも役に立てば幸いである。

この記事を書いた人
まめた

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