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酸素供給について紐解いていく

全理学療法士向け
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さて、今回は酸素供給を軸に記事を進めていきたいと思う。

その前に、前回のブログの問いに対して答えてみよう。

 

問題:静脈血の酸素飽和度(SvO2)はいくつだろうか?

 

正解は、75である。

 

これに関して、どういった印象を持つだろうか。

動脈血が100%で、静脈血が75%ということは、末梢組織で使用されたのは25%ということになる

例えて言うと、子供に1000円渡して、好きなように使ってよいというと、結果250円しか使わなくて、750円は財布に残っているみたいなものだ。

 

結局250円しか使わないのであれば、1000円もいらなくね?

これが率直な感想だろうが、その疑問は一部正しいが、そう簡単なものでもない。

この辺りについては、時間があればいずれ説明しようと思うが、それほど呼吸循環は奥が深いともいえる。

さて、本線から少し脱線してしまったが、今回は酸素供給というテーマで進めていこう。

 

 

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酸素供給の指標について

前回のブログにて、SpO2は動脈血に含まれる酸化ヘモグロビンの濃度は時間の概念を含んでいないため、厳密には酸素供給の指標としては不十分であるという話をした。(以下は前回提示した図)

 

 

では、どういった指標が酸素供給の指標として相応しいのか。

ズバリ先に答えを言うと、DO2(酸素供給量)という指標になる。

名前をみるとそのままやんけ!となるかもしれないが、実はこの指標をよく知らない医療者がおり、特にコメディカルに多い印象である。(皆さんはどうだろうか?)

 

このDO2を理解すると酸素供給について全体像が理解しやすくなるため、聞きなれない指標だからと毛嫌いせず、このブログを最後まで読んでもらい、これを機に理解して頂きたい。

さっそくDO2について説明していこう。

 

 

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DO2とはなんぞや?

さて、DO2を考えていくにあたり、2つの重要な指標について説明する必要がある。

 

まず一つ目が CaO2 である。

CaO2とは、動脈血酸素含有量のことであり、単位はml/dlである。まずは計算式を示そう。

CaO2 =(1.34×ヘモグロビン濃度×SaO2)+(PaO2×0.003) 

構成要素としては、ヘモグロビン濃度動脈血酸素飽和度動脈血酸素分圧である。

すなわち、CaO2単位血液量当たりの酸素量を示すことになる。

いつもの例で表すと、まさに寿司の量になる

 

もう一つの重要な指標が CO である。

COとは、心拍出量のことであり、単位はml(L)/minで表される。もしかしたらこちらの方がなじみがあるかもしれない。式で表すと以下になる。

CO = 一回拍出量(SV) × 心拍数(HR)

これは、1分間で心臓から拍出される血液量を示す。

いつもの例で表すと、寿司が回るレーンの速度といったところか。

 

では、本題のDO2はどのように表されるかであるが、計算式としては以下になる。

DO2 = CaO2 × CO
= 単位血液量当たりの酸素量 ×1分間で心臓から出る血液量

つまり、一分間で組織に供給される酸素量を意味する。

ゆえに、このDO2は 時間の概念を含んだ酸素供給の指標であることから、呼吸循環の本質的な目的は、DO2を維持することと言える。

 

 

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酸素供給に関わる重要な要素

さて、呼吸循環の本質的な目的について理解できたところで、もう一度DO2の概要と、それぞれの数値についてひも解いてみよう。

以下が、DO2の概要を示したものになる。

これを見て何を思うだろうか。

まず重要な点として、過去にも示した呼吸の代表的な指標であるPaO2についてみてもらおう。

この式をみるとわかるが、酸素供給の観点から考えると、PaO2の数値に0.003をかけたものが酸素量となる。正常が100mmHgであることを考えると、0.3mlとなる。

 

対して、ヘモグロビン濃度については、1.34をかけたものが酸素量となる。

SaO2が一定の状況でヘモグロビン濃度の数値が1g/dl減少した場合、酸素量が1.34ml減少する計算だ。

 

これらの比較をわかりやすくすると、Hb1g/dlの変化は、PaO2換算で446mmHg分の変化になる。

こう考えると、PaO2は呼吸の指標としてよく用いられてるのになぜ?と思うかもしれない。

これらの事実からも、PaO2はあくまで酸素化の指標でしかないということを覚えておいてほしい。

 

また、ヘモグロビンが13g/dlから12g/dlに1g/dl減少する影響をSpO2で換算した場合、8%の減少、すなわち98%から90%になることと同程度の酸素量の減少を意味する。

採血検査にてヘモグロビンが1g/dl減少していてもそこまで気にならないとは思うが、SpO2が8%低下しているとかなり驚くことだろう。しかしながら、酸素供給という呼吸循環の本質から考えると、両者は変化は同等の影響があると言えるのだ。

※ 上記はあくまで酸素供給という観点で考えた場合であることに注意

 

一般的に呼吸循環を考えると、SpO2やPaO2、血圧や脈拍などに目が行きがちだが、酸素供給の観点から考えた場合、ヘモグロビン濃度がかなりの影響力を持っていることがおわかり頂けただろう。

つまり、ヘモグロビンが低下した病態である、貧血 は酸素供給の観点から注意すべきものなのだが、そこまで重要に考えていない人の方が多いのではないだろうか?
少なくとも、DO2を意識していない段階の私は、どっか出血でもしてるのかな?程度に考えており、酸素供給の観点からはそこまで重要視はしていなかった。

現在では、日々の患者の病態把握を考える際には、DO2を中心に置くようになっており、、貧血についても様々な視点で考えるようになっている。

 

 

終いになるが、今回の様にDO2という観点から酸素供給について考えてもらうと、呼吸循環のダイナミズムについてより一層理解が進むのではないかと思うので、是非とも理解して頂きたい。

 

 

まとめ

今回は、DO2 という指標を基に、呼吸循環の本質について紐解いてみた。

酸素”というと呼吸のイメージが強いと思われるが、こと”酸素供給”という概念になった場合、呼吸のみでなく、循環も重要な要素であることがお分かりいただけただろう。

 

次回は、今回の話にも上がった、ヘモグロビンについて(主には貧血)の記事にしてみたいと思う。

貧血ときくと、めまいやふらつきがパッと思い浮かぶだろう。

ただ、今回の様にDO2を軸に考えてみると、違った視点で貧血について考えられるようになる。

今回の記事が興味深いと思った方は、次回以降も楽しみにして頂きたい。

 

という訳で、今回はこの辺で!

 

”我ながら、回転寿司の例えはよくできていると思ってます”
(´-`).。oO

この記事を書いた人
りゅうぞう

生理学好きのギャンブラーPT
経済と投資について勉強中!!

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